くよくよしやすい人は、自分と距離を取ってみることが大事(写真/gettyimages)
くよくよしやすい人は、自分と距離を取ってみることが大事(写真/gettyimages)

 先進国の中でも自己肯定感が極端に低いといわれる日本人。性格的に悩みやすい、くよくよしやすい、ということで悩んでいる人も多いよう。ではどうやって自己肯定感は高めていけるのでしょうか。オンラインスクールでありながら全米トップ校として知られる「スタンフォード大学オンラインハイスクール校長」の星友啓さんが新刊『全米トップ校が教える自己肯定感の育て方』(朝日新書)の中で最新科学によるメソッドを公開しています。

【自己肯定感チェックを試してみよう!】

*  *  *

「自己肯定感を高めたい」という人の中には物事をくよくよマイナスに考えてしまう性格をどうにかしたい、という人も多いですね。自分の悩みとしっかり向き合おうとして、自分の心の中で考えれば考えるほどさらにネガティブな気持ちになってしまう。

 声には出さずに心の中で考えたり、自分と対話をしたりする。ポジティブもネガティブも、私たちは生きている限り、そうした「心の声」と常に付き合いながら過ごしています。

 そして、私たちの「心の声」は、とても大切な役割を果たしています。

 たとえば、自分を自分として意識することができるのも、自分の心を意識することができるから。「心の声」の働きがなければ、自己意識を持つことができません。一度聞いたことを心の中で繰り返すことで、記憶したり、心に言い聞かせてみたり、学習やトレーニングにも「心の声」が役立ちます。また、感情をうまくコントロールしたり、目標に向かって計画したり行動したりする のにも「心の声」が一役買っているのです。

 この「心の声」の仕組みは、最近の脳科学によってだいぶ明らかにされてきました。

 私たちの脳のメイン機能として、おなじみの「ワーキングメモリー」。長期や短期の記憶を現在の意識にホールドして、整理したり、組み合わせたり、なんらかの「コマンド」を意識の中で実行する脳の働きを指します。

 そのワーキングメモリーの要素の一つが、私たちの言語に関する「音韻ループ」(phonological loop)という機能です。

 音韻ループには大きく分けて二つの機能があります。一つが「心の耳」ともいうべき機能で、これによって今聞いた言葉を自分の意識に留めておくことができます。もう一つがまさに「心の口」にあたる部分で、頭の中で意識している言葉を繰り返したりするのを可能にします。この音韻ループのおかげで、私たちは心の中で自分の「心の声」と対話することができるのです。

著者プロフィールを見る
星友啓

星友啓

星 友啓(ほし・ともひろ) 1977年、東京生まれ。スタンフォード・オンラインハイスクール校長。哲学博士。Education; EdTechコンサルタント。2001年、東京大学文学部思想文化学科哲学専修課程卒業。02年より渡米、03年、テキサスA&M大学哲学修士修了。08年、スタンフォード大学哲学博士修了後、同大学哲学部講師として論理学で教􄽃をとりながら、スタンフォード・オンラインハイスクールスタートアッププロジェクトに参加。16年より校長に就任。現職の傍ら、哲学、論理学、リーダーシップの講義活動や、米国、アジアにむけて、教育及び教育関連テクノロジー(EdTech)のコンサルティングにも取り組む。

星友啓の記事一覧はこちら
次のページ
「心の声」はマイナス方向にも