(イラスト/小迎裕美子)
(イラスト/小迎裕美子)

 コロナ以前の日常を取り戻しつつある今、飲み会での「飲みニケーション」不要の声が目立っている。従来型の飲み会に頼るコミュニケーションの在り方を見直した企業も出てきた。「ポストコロナ」特集のAERA 2021年12月20日号から。

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 コロナ禍で多くの人の意識を変えたのが職場の飲み会文化、いわゆる「飲みニケーション」だ。その評価はかつてないほど揺らいでいる。

 日本生命保険が10月に実施した調査で、飲みニケーションは「不要」「どちらかといえば不要」と回答した社会人が6割超になり、2017年の調査開始以来、初めて「必要」「どちらかといえば必要」の割合を上回った。

 忘年会や新年会も「必須」の時代ではなくなりつつある。

 東京商工リサーチが10月に実施した忘・新年会に関するアンケートでは、7割の企業が「開催予定がない」と回答した。そんななか、「リモート忘年会」を企画している会社もある。

 都内の会社員女性(43)の職場は、昨年はコロナ禍で中止した忘年会をリモート形式で復活させることに決めたという。

「うちの会社はリモート飲みがこの1年で定着しました。なので、驚きはなかったですね」(女性)

 自宅に届いた高級ホテルのオードブルやシャンパンを手に、パソコンのオンライン会議や仮想空間の画面に向き合うという。経費は「社内のコミュニケーション活性化のため」として会社から全額補助が出る。在宅勤務が続く女性の職場では、部署ごとの飲み会や新卒・中途採用者の歓迎イベントでもこのスタイルが踏襲されてきたという。

「勤務形態だけでなく、飲み会も『リモート可』というのは、アフターコロナにおいても人材獲得の売りになるという上層部の判断もあるようです」(同)

■仕事飲み会はストレス

 だが、クライアントの「接待」となると話は別だ。女性は「新型コロナが収束しても、男性的なコミュニケーションでビジネスを回す接待文化には戻らないでほしい」と訴える。

「キャリアを積む上で、男性とどこまで同じことをやらなきゃいけないのか、と自問自答しながら働いてきた女性は多いはずです。1次会の後、クラブやキャバクラへ行ったり、週末はゴルフへ行ったり。コロナ禍でそういう接待文化がマストではない世界になったのはうれしいことです。後戻りしないことを願っています」(同)

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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