新型コロナウイルス感染拡大後、あらゆる物価が上昇している米国。そんな中でも、ホリデーシーズンを迎えてオンラインなどでの消費は活発になっている。一方で「オミクロン株」の経済への影響について、恐ろしい指摘もある。AERA 2021年12月13日号から。

【図】今年は米国の物価が大幅に伸びている

ニューヨーク証券取引所の前にはクリスマスツリーが飾られ、年末にかけてセールが佳境を迎える(撮影/津山恵子)
ニューヨーク証券取引所の前にはクリスマスツリーが飾られ、年末にかけてセールが佳境を迎える(撮影/津山恵子)

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 全米小売業協会によると、11、12月の小売りの伸びは、前年比で8.5~10.5%増になりそうだといい、過去最高の8590億ドルを市民が費やすとみる。新型コロナの感染拡大前を上回るという予想だ。

 米アドビによれば、感謝祭の翌日に大セールがある「ブラックフライデー」の買い物客は米東部時間26日夜の時点で、オンラインで66億ドルを使ったという。最終的にはオンラインでの消費額は88億~92億ドルに達し、昨年の90億3千万ドルを狙う勢いだ。

 今年は、消費者もサプライチェーンの混乱などを知っており、ブラックフライデーよりも前からオンラインで買い物をしている。統計に表れないこうした買い物を入れると、新型コロナの感染拡大前をはるかに超えるとみられる。

 一方、米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長は29日、新型コロナの新変異株「オミクロン」の出現で、サプライチェーンの混乱がさらに悪化する可能性があると指摘した。米紙ウォールストリート・ジャーナルによると、同氏が出席した30日の上院銀行委員会向けの証言原稿で触れていたという。パウエル氏は、

「ウイルスに対する懸念が高まれば、働いている国民の意欲が低減し、雇用市場を進める足かせとなって、サプライチェーン上の混乱をさらに悪化させるかもしれない」

 と述べたという。サプライチェーンの問題は、物価上昇だけでなく、米国人の生活に大きく影響する雇用市場にまで波及するという、恐ろしい指摘だ。

■利上げ時期に注目

AERA 2021年12月13日号より
AERA 2021年12月13日号より

 FRBが注目している個人消費支出(PCE)物価指数は、10月に前年同月比5%増だった。つまり、消費者はクリスマスシーズン前から支出する意欲があることを示している。パウエル氏はインフレ率がFRBの目標である2%を「大きく上回っている」とした。

 ただ、マーケットはパウエル氏の発言全体から判断して、FRBは利上げ開始時期や利上げペースを探っているとみる。

 景気拡大期には当然のことだが、庶民にとっては、住宅や車のローンを始め、生活への負担につながる。米国民は、常に「インフレ」を意識した生活を余儀なくされている。(ジャーナリスト・津山恵子(ニューヨーク))

AERA 2021年12月13日号より抜粋