クルマでドライブするように空を自由に翔けたい。そんな夢のカタチがあと一歩に迫った(写真=山本友来)
クルマでドライブするように空を自由に翔けたい。そんな夢のカタチがあと一歩に迫った(写真=山本友来)

 SkyDrive代表取締役CEO、福澤知浩。近未来が描かれるとき、クルマは空を飛んでいた。それははるか遠い未来だと思っていた。しかし、もう違う。福澤知浩の率いるSkyDriveは、すでに空飛ぶクルマの飛行試験に成功している。2020年には有人飛行も成功させた。「空飛ぶクルマができたら楽しそう」という思いで、起業した。その思いは変わらない。夢が現実になるのはもうすぐだ。

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「風の谷のナウシカ」に出てくるメーヴェのような機体が陽光に輝いている。機体の四隅から翼のような腕が伸び、先端には対になったプロペラが下向きに8基。「eVTOL(電動垂直離着陸機)」だ。クルマとドローンが合体したようなその形はまさしく「空飛ぶクルマ」である。ここは2025年の大阪湾に面した夢洲。目の前には海が広がり、背後には高層ビルがそびえていた。

 ヘルメットを装着した客が後ろのシートに乗り込むと、コックピットのパイロットは親指を立て、モニターをタッチする。操縦桿(かん)などは一切ない。極めてシンプルだ。プロペラが「ブォーン」と唸(うな)りをあげ、機体が垂直に浮き上がる。視界が五月晴れの青空で満たされると、機体はゆっくりと旋回し始めた。高層ビル群が後方に移り、ぼんやりと六甲アイランドが見えてくる。パイロットは何やら合図をすると、プロペラが「キーン」と機械音をあげた。その瞬間、風を切るように加速しながら神戸沖へと飛んでいった──。

 こんな夢のワンシーンを語るのは「空飛ぶクルマ」を開発するSkyDrive(スカイドライブ)の社長・福澤知浩(ふくざわともひろ)(34)だ。まるでSF映画のようだが、4年後に開かれる大阪・関西万博で私たちが必ず目にする場面である。

 ドローンが登場した時、あれを大きくすれば人を乗せて空を飛べると思った人はいたはずだ。海外では空飛ぶクルマの試験飛行に成功しているのに、国内では相変わらず「ハア、それ何?」という時代が続いた。ところが20年、いきなりSkyDriveが公開で有人飛行を成功させたのである。ゼロからここまで引っ張ってきたリーダーが福澤だった。

 空飛ぶクルマはリスクの大きいビジネスだ。それをあえて自分で作ろうとした福澤は、その生き方もちょっと変わっている。

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