衆議院議員選挙奈良全県区から無所属で出馬、初当選を果たした/1993年7月、奈良市の事務所で (c)朝日新聞社
衆議院議員選挙奈良全県区から無所属で出馬、初当選を果たした/1993年7月、奈良市の事務所で (c)朝日新聞社

 厳しい母から逃れたくて早稲田にも慶応にも受かったのに、弟が私立中学に受かったからと断念させられ、奈良から神戸大学に往復6時間かけて通学した。ロックバンドでドラムを叩き、オートバイを操った。松下政経塾から突如、米国大統領選初の女性候補と目された民主党のパトリシア・シュローダー下院議員のインターンになった。合間合間に必ず挟まる、赤裸々な恋愛話……。そんな内容を語る調子に、彼女への共感がにじむ。2人が何度も引用していたのが、最後の一節だった。

「頑張っている同性の皆さん、一度っきりの人生だもの、自分に気持ちいいように生きようネ! GOOD LUCK、GIRL FRIENDS!」。高市さんはシスターフッドの人で、今の彼女はプリテンダーではないか。2人の一致した意見だった。

■女性は「お察しします」

 なるほどプリテンド(装う)か。シスターフッドは隠し、「安倍好み」のふりをし、総裁選へ。作戦としてはわかる。が、それでいいのかと割り切れない。2人に話を聞くことにした。

 北原さんは高市さんを悪く語る人(とりわけリベラル系の男性)に、「女性嫌悪」を感じたという。極端な右寄りで問題ありの人だが、それにしてもひどい、と。そこで本を読み、原点を知り、驚いたという。

「安倍さんにすり寄って、実力以上に評価されている人というイメージだけど、これだけ2世、3世の多い政治の世界で、サラリーマン家庭出身の女性があそこまでの地位をつかんだ。そのためには野田聖子さんや小渕優子さんがしなくてもいいことを、たくさんしたと思う」

 確かに、今回の総裁選へ立候補を表明している岸田文雄さんも河野太郎さんも、立候補を断念した石破茂さんも、みんな政治家の家に生まれている。

「高市さんは税金や軍事など、女が苦手とされるところに政治家としての自我を求めた。女だからと舐められないための戦略でもあり、舐められないために『女の味方ではない』と肩ひじを張った。それで保守の王道を歩みたいという思いはわかるけど、それにしてもあっちに寄りすぎちゃったよね、と思う」。そう言って、こう続けた。

「でも、そうなったのには訳がある。お察しします、と思います。女性だったらみんな、お察ししますなんじゃないかな」

 井戸さんは元衆院議員。次期衆院選に立憲民主党から立候補する。政策は相容れないが、「高市さんは人として、信用できる」と言う。井戸さんは松下政経塾出身で、高市さんの後輩。卒塾式での体験があるからだ。

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