日本郵政グループでは、旧特定郵便局長らでつくる郵便局長会に気遣うような動きがそこかしこで見え隠れする (c)朝日新聞社
日本郵政グループでは、旧特定郵便局長らでつくる郵便局長会に気遣うような動きがそこかしこで見え隠れする (c)朝日新聞社

 新たに移転する郵便局の不動産を、郵便局長たちが買い漁っている。日本郵便が土地などを直に取得できないよう地主に働きかける例もある。賃料収入を元手に得た「もうけ」が流れる先には、ある団体の存在が──。AERA 2021年9月20日号の記事を紹介する。

【写真】日本郵便の社内資料はこちら

*  *  *

 筆者に6月、ある高齢女性から直筆の手紙が届いた。そこには、こう書かれていた。

<戦後、懸命に働いて買った苦労の土地なので、手放すことは考えていませんでしたが、役所(の幹部)が何度も頼みに来て、役所が買うならと首を下げました。その後、役所から「これからは郵便局と話して」と言われ、郵便局長から「不動産鑑定士の言う金額だ」と言われ、私は何も言わず黙って聞き、契約書に名前を書いて印鑑をついてやりました。金額は誰にも話さず、心の中に入れています。あまりにも安いので>

 地元の郵便局長から、局舎の移転先となる土地を安く買いたたかれたとみられる。女性の希望で関係者への取材は控えたが、同様の例は他にもありそうだ。そう思わせる独自データを紹介する前に、まずは郵便局をめぐる歴史をおさらいしよう。

■社員が先回りして取得

 日本郵政グループの中核「日本郵便」は、全国で約2万局の郵便局を直営している。うち約1万9千局は「旧特定郵便局」だ。お金のない明治政府に代わり、地方の名士が自宅などを無償提供してつくった局舎がルーツだ。2007年の郵政民営化後も、大型の旧普通郵便局とは区別して運営されている。局舎が局長職とともに“世襲”で引き継がれた例も多い。

 日本郵便が借りている局舎は約1万5千あり、賃料総額は600億円近くになる。内部資料によると、現役の局長が持つ局舎が2千、2親等以内の親族と日本郵政グループ社員の保有が2774、元局長の保有が5940ある(19年4月時点)。

 だが、着目したいのは局舎の「ストック」ではない。移転や開局など「フロー」のほうだ。

次のページ