関東地方に住むシングルマザーの女性は、コロナの影響での子どもたちの学力低下を心配している。7月、自宅で宿題をする女性の子どもたち(本人提供)
関東地方に住むシングルマザーの女性は、コロナの影響での子どもたちの学力低下を心配している。7月、自宅で宿題をする女性の子どもたち(本人提供)
AERA 2021年8月2日号より
AERA 2021年8月2日号より
AERA 2021年8月2日号より
AERA 2021年8月2日号より
AERA 2021年8月2日号より
AERA 2021年8月2日号より

 昨春の新型コロナウイルスでの休校期間は、子どもたちの学習にどんな影響を与えたのか。特にどんな家庭に影響が大きかったのか。大規模な調査結果が出た。AERA 2021年8月2日号の記事を紹介する。

【図】世帯年収別の勉強時間はこちら

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 新型コロナウイルスは、子どもたちの学びの機会を奪った。一見、それはみんなが「平等」に奪われたようにみえるが、度合いには差があるようだ。

 関東地方に住む女性(51)は、高校生と小学生の3人の子どもを育てるシングルマザー。このところ、小6の長男(12)の成績が悩みの種だ。

 授業についていけなくなった長男が、漢字テストなどで0点を取ってくるようになった。

「もともと成績はいい方ではないけど、明らかに学力が低下している。0点だなんて、(ドラえもんの)のび太じゃないんだから」

 勉強の遅れが気になり始めたのは、昨春の一斉休校がきっかけだ。休校中はドリルを30分程度やる以外、1日のほとんどをゲームに費やした。

 女性は当時、病気のために仕事をやめたばかり。食費をどう工面するかなど日々の生活に精いっぱいで、勉強を教える余裕はなかった。

 学校再開後は、休校の遅れを取り戻すために授業のスピードが上がった。わからないまま授業は進んでいく。だからなのか、帰宅後はゲームを始め、寝るまで離さない。コロナ前よりもゲーム時間は延びた。「依存症みたいになっているよ」。女性が声をかけても耳を貸さない。

 以前は、学校で放課後にボランティアから勉強のフォローを受ける「寺子屋」と呼ばれる場があった。だが、感染拡大を防ぐために中止になり、いまだに再開されていない。

「寺子屋で勉強時間が確保できていたのに。塾に行かせる経済的余裕はないし、ありがたかったのですが……」

 長男は来年、中学生だ。今よりお金もかかるため、とにかく経済面と学習面が心配だという。現在、女性は求職中だが、今の体調ではできる仕事が限られ、コロナで求人も減っている。再就職は難しそうだという。

「まずは経済的に安定しなければ。ただ、再就職できても塾に行かせる余裕はない。どうすればいいのでしょうか」

■親が勉強を見られるか 休校中は直接「差」が出た

 コロナの拡大前と、全国的な臨時休校期間中について、子どもの平日の勉強時間を比べると、年収800万円以上は1.1時間減だが、400万円未満は1.5時間減った──。

 こんな調査結果を6月、日本財団と三菱UFJリサーチ&コンサルティングが発表した。データは全国の小学生から高校生の子どもがいる世帯の親4千人から集めた。

 調査では、臨時休校前(昨年1月)と全国的な休校中(昨年5月)に加え、休校後(今年1月)の勉強時間も調べた。すると、年収400万円以上の世帯は休校前よりも、休校後は勉強時間を増やしたが、400万円未満の世帯は休校前の水準に戻っただけだった。もともと、年収ごとに勉強時間の「差」は存在していたが、休校を経てそれは拡大したようだ。

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