今月9日から山梨県内で始まった短距離陣の合宿には、サニブラウンを除く代表選手が集まった。合宿初日、リレーメンバーとして代表入りした桐生は芝生の上を軽く走っていた。「日本選手権以来、久しぶりに走ったが右足には何の違和感もなかった。走りの感覚を取り戻せば、五輪ではベストパフォーマンスを出せる」と語った。

 リレーにおける桐生の役割は大きい。

 リオ五輪とその後の2度の世界選手権では予選、決勝すべてで3走を務め、メダル獲得に貢献している。桐生自身も「最近の世界大会のメダルをすべてもっているのは僕しかいない。いろんなケースに対応できる」と豊富な経験をアピールする。

 走順はどうなるのか。

 現状、1走は日本選手権で初優勝を飾り、スタートが得意な多田修平(住友電工)、2走は山縣、3走は小池の可能性が高い。アンカーに桐生、サニブラウン、日本選手権で2位に食い込んだ新鋭デーデー・ブルーノ(東海大)のうち、調子の良い選手が選ばれそうだ。

 日本陸連の土江寛裕・五輪強化コーチは前向きだ。「どの選手も様々な走順を走れる。これはリオ五輪になかった武器。良い意味で誰を、どの走順で使うか非常に悩ましい」。金メダルへのカギを問われると「まずは個人種目で戦った上でのリレー。個人で決勝に行く選手が複数いる状態でリレーに臨みたい。あとは桐生とハキーム(サニブラウン)の回復がどこまでか、でしょう」。

(朝日新聞スポーツ部・堀川貴弘)

AERA 2021年7月26日号より抜粋