ネスカフェ原宿にある無人販売機「fuubo(フーボ)」。利用者は事前にスマホで支払いをすませる。お買い得な価格設定だ(撮影/写真部・高野楓菜)
ネスカフェ原宿にある無人販売機「fuubo(フーボ)」。利用者は事前にスマホで支払いをすませる。お買い得な価格設定だ(撮影/写真部・高野楓菜)

 食品ロスが叫ばれる中、業界のルールに縛られて毎日多くの食品が廃棄されている。そんな商品を割安で販売する自販機が相次いで登場しているという。AERA 2021年7月19日号では、食品ロスをお得に削減できる「三方よし」の取り組みを取材した。

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 まだ食べられるのに捨てられてしまう「食品ロス」。2018年度は国内だけで約600万トンにものぼる。要因はさまざまだが、業界内の「納品期限」をめぐる慣例も、その一つだ。

 代表的なのは「3分の1ルール」。賞味期限切れの商品が店頭に並ぶのを避けるため、食品メーカーと小売店が設定する基準だ。例えば賞味期間が6カ月の商品だと、卸業者は製造日から2カ月以内にスーパーやコンビニエンスストアに納品しなければならない。納品が遅れると賞味期限の「3分の1」を過ぎてしまい、卸業者からメーカーに返品されたり廃棄されたりする。商品によっては基準を緩めた「2分の1ルール」もある。

■食品ロスをお得に削減

 こうした納品期限を過ぎた菓子や飲料を専用に扱う無人販売機を設置したのが、ネスレ日本だ。飲料事業本部の高岡二郎部長(37)は言う。

「フレッシュな商品をお届けすることにもつながる納品期限のルールの趣旨は尊重しています。ただ、賞味期限まで多くの日数があるにもかかわらず、通常の流通ルートでの販売が困難になり、場合によっては廃棄される可能性が高まる商品が存在しているのも事実です」

 食品の需要は天候などにも左右される。そのため一時的に在庫がかさみ、納品期限を過ぎてしまう商品が出るのを完全に防ぐのは難しい。同社はこれまでフードバンクに寄付するなど廃棄を減らす努力をしてきたが、さらなる食品ロス削減につなげようと販売機の設置を決めた。

 販売機は6月17日からネスカフェ原宿(東京)など全国5カ所で稼働させた。食品ロス削減のアプリ開発などを手掛ける「みなとく」が開発した装置で、ネスレ日本が商品を出荷し、みなとくが配送を請け負う。

 販売機ではペットボトルや粉末タイプのコーヒーをはじめ、お菓子のキットカットも扱う。価格は「自社通販サイトと同等」(ネスレ日本)で、在庫の量や時期によって安くする。現状は最大で希望小売価格の半額程度に設定している。

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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