大人でも、注射が怖い人は結構いる。だが、昨今は毎日、接種シーンを見せられる。先端恐怖症なら注射でパニック症状を起こすこともある。ちょっと考えて、と言いたい。AERA 2021年7月12日号から。
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洋服の袖をまくり上げた腕がテレビ画面いっぱいに映し出される。その腕に注射器が近づくと、プスリと針が皮膚へ刺さる。
「まただ!」
高知県に住む30代の女性は、慌てて番組を変えた。
昨年12月にイギリスで新型コロナウイルスのワクチン接種が開始されてから半年、日本でも接種が本格化した。テレビでは毎日のようにワクチン接種のニュースが取り上げられ、腕に注射針が刺される映像が大きく映し出されることも多い。この映像が不快だという声が出ている。
■皮膚に入る感覚がイヤ
「針が皮膚に刺さるシーンがすごく嫌で、目にいれたくありません。特に食事中は見たくない。食欲が失せてしまいます」
前出の女性がそう言えば、都内に住む40代の女性も訴える。
「注射のシーンが流れると、絶対に目をそらします。注射針が皮膚に入っていく感覚がイヤ。麻酔が怖くて歯医者にもここ10年行っていません」
SNSには「注射の映像を見るだけで怖い」という書き込みが散見され、テレビ局にもその声が寄せられる。BPO(放送倫理・番組向上機構)には「注射針を刺す映像が不快」という視聴者の意見が届く。
NHK広報局は、「ワクチン接種映像について、『おはよう日本』『ニュース7』『ニュースウオッチ9』などのニュース番組では、注射針を腕に刺すシーンはできる限り使用しないようにしています。また、アップの映像も、できる限り避けるようにしています」という。
大人になって注射が怖いとは、なかなか口に出せない。かくいう記者もその一人。注射の映像が流れると、必ず目をつぶる。記者の場合、過去に採血と歯医者の麻酔で脳貧血を起こした。いざワクチンを打つときに倒れないか、不安で仕方がない。
「不安・恐怖症には様々なものがあるのですが、注射が怖くて仕方がないというのは先端恐怖症の可能性があります」