AERA 2021年6月14日号より(写真:水上健さん提供)
AERA 2021年6月14日号より(写真:水上健さん提供)
AERA 2021年6月14日号より(写真:水上健さん提供)
AERA 2021年6月14日号より(写真:水上健さん提供)
水上健(みずかみ・たけし)/国立病院機構久里浜医療センター内視鏡部長。開発した無麻酔大腸内視鏡挿入法「浸水法」は国内外で広く導入(写真:水上健さん提供)
水上健(みずかみ・たけし)/国立病院機構久里浜医療センター内視鏡部長。開発した無麻酔大腸内視鏡挿入法「浸水法」は国内外で広く導入(写真:水上健さん提供)

 コロナ禍による運動不足もあって、おなかが張って困っている人が増えているようだ。今年1月には専門外来も開設された。ガスだまりも原因をきちんと押さえれば、対処の方法が見えてくる。AERA 2021年6月14日号の記事から。

【便秘の改善でガスが減った?写真はこちら】

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 今年1月、久里浜医療センター(神奈川県)に新しく開設されたのが「腹部膨満外来」だ。医師で同センター内視鏡部長の水上健さんは、便秘や下痢、またはその両方を繰り返す過敏性腸症候群(IBS)をはじめとする便通障害の患者をたくさん診てきた。その中で、「おなかがガスで張ってつらい」「ゲップやおならが頻繁に出る」といった腹部膨満を訴える患者がかなりいることを実感。これまでの「IBS・便秘外来」とは別に、専門外来の開設に至った。

「当初はそれほど患者さんが来ると思っていなかったのですが、想像以上。コロナで患者数が減っている科もあるのに、腹部膨満外来は増えています」

 食事をすると、消化管内でガスが発生する。これらのガスは、通常は呼吸やおならとして排泄(はいせつ)されていくが、ガスの産生と排泄のバランスが崩れると、ガスが腸管内に過剰にたまり、腹部膨満が起こる。水上さんが着目しているのは、ストレスや緊張で大量の空気をのみ込む「呑気(どんき)症」だ。

「普段は腹部膨満でつらいのに、来院時は症状がなく、内視鏡でガスの量は正常範囲内。休日も腹部膨満がない。そういう場合、呑気症が考えられます」

 患者は遠方から会社や学校を休んで来る人がほとんどで、緊張やストレスが強い環境から離れることで、来院時は呑気症が起こらない。水上さんが腹部膨満患者75人を調べた研究では、約9割に呑気症が見られ、呑気症だけが腹部膨満の原因の人では、ガス増加を腹部X線で確認できたのは1割未満だった。

「呑気症はメンタル疾患で、悩めば悩むほど悪化します。一方、ストレスによる呑気症だと分かるだけで安心し、症状が緩和する人もいます」

 場合によっては抗不安薬などの薬を処方するが、基本的には日常生活でストレスをため込まない工夫が有効。十分な休息や睡眠をとり、軽い運動や趣味でストレスを発散する。心身をリラックスさせる自律訓練法や認知行動療法などの心理的アプローチも非常に有効である。(ライター・羽根田真智)

AERA 2021年6月14日号より抜粋