これは読んで字のごとく、農薬を使用せずに栽培した野菜のことですが、先程の残留農薬などの問題があり、現在は農林水産省の「特別栽培農産物に係るガイドライン」で使用が禁止されています。

 日本国内で栽培される野菜で、オーガニックと名乗るためには、農水省が定めた「有機JAS」に厳格にのっとって栽培されていることが必要となっているんです。規定の中には、いつ、どんな農薬や肥料を散布したのかの記録をきちんと残しておくことも義務付けられていて、とても手間がかかるんです。

 そして最近、魚の養殖に関して、オーガニックフッシュの規格が正式に認定され、くら寿司が養殖に関わっているはまちが、「オーガニックはまち」として第1号に認証されました。

「オーガニックフィッシュ」って以前からあるやん、と思われた方もいらっしゃると思います。

 その通りです。既に世の中には、オーガニックをうたった養殖魚が存在し、販売されています。鳥取県で養殖されている「お嬢サバ」などもその一例です。

 ただ、現在市場に出回っている「オーガニックフィッシュ」は、今のところは「自称」ということになります。

 というのも、これまで日本にはオーガニックフィッシュに関して、正式に認められた規格が存在していなかったからです。

 ヨーロッパやオーストラリアなどには、政府が認定した正式な規格があるので、ノルウェーのオーガニックサーモンなどは、EUが定めた正式な手順で養殖された「オーガニックフィッシュ」ということになります。

「オーガニックフィッシュ」として認められるには、大きく分けて「エサ」「養殖環境」「加工工程」の三つの分野で、厳格に定められた条件を満たす必要があります。

「エサ」については、化学物質の使用や遺伝子操作をされていない、自然由来の素材から作られたものであること。そしてそのエサの原料はいつ、どこで、どうやって作られたのかのトレースおよび記録も必須です。

「養殖環境」については、水質はもちろん、オーガニックではない養殖をしているいけすからの距離、そして一つのいけすに入れる魚の数なども厳しく定められているんです。もちろん、いつ、どんなエサや薬を与えたのかの記録を残さなければなりません。

 魚をストレスの少ない環境で、健康的に育てることが求められているんです。

 そして「加工工程」についても、HACCP取得工場などの条件が定められています。

 くら寿司が今回、オーガニックフッシュの養殖にチャレンジするにあたって、まずいけすの設置場所探しに苦労しました。家庭や工場からの排水が流れ込む河口の近くは水質基準にマッチする場所がなく、かといって水質や水温、潮通りなど養殖に適した場所では既に養殖が盛んに行われていて、規定で定められた距離を空けることが困難でした。

 そしてなんとか和歌山県に、条件に合った場所を確保し、さらにエサの製造や加工に協力していただけるパートナー企業さんのおかげで実現することができました。

 今年12月の出荷へ向けて、現在約50トンのはまちがすくすくと育っています。12月には、全国のくら寿司のお店でも販売する予定ですので、ご期待ください。

 2019年4月に始まったこの連載が、『お魚とお寿司のナイショ話』(税込み990円)として書籍化され、2月19日に発売されました。

 ご家庭や職場、学校などでのちょっとしたコミュニケーションのきっかけになるネタが満載です。書店やネット書店のほか、全国のくら寿司のお店でも販売しています。

○岡本浩之(おかもと・ひろゆき)
1962年岡山県倉敷市生まれ。大阪大学文学部卒業後、電機メーカー、食品メーカーの広報部長などを経て、2018年12月から「くら寿司株式会社」広報担当、2021年1月から取締役 広報宣伝IR本部 本部長

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岡本浩之

岡本浩之

おかもと・ひろゆき/1962年岡山県倉敷市生まれ。大阪大学文学部卒業後、電機メーカー、食品メーカーの広報部長などを経て、2018年12月から「くら寿司株式会社」広報担当、2021年1月から取締役 広報宣伝IR本部 本部長。

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