栄東中学の受験会場では、寒空の下、保護者が受験生を激励して送り出した/1月10日、さいたま市 (c)朝日新聞社
栄東中学の受験会場では、寒空の下、保護者が受験生を激励して送り出した/1月10日、さいたま市 (c)朝日新聞社
AERA 2021年2月1日号より
AERA 2021年2月1日号より

 中学受験の本番、子どもが実力を発揮するために親はどんな声をかけたらいいのか。AERA 2021年2月1日号で、専門家に聞いた。

【中学受験前後 親が気をつけるべき声かけはコチラ】

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 中学受験の会場。例年ならば校門前にずらりと並ぶ各塾の講師たちだが、今年はコロナ禍の影響でその姿は見られない。静かに待ち構える門に吸い込まれるように入る子どもたちにエールを送るのは、親たちだ。

「いつもなら、校門前に立っている見慣れた講師の激励で、緊張がほどける子が多いのですが、今年はその役目も全て親が背負うことになりそうです」

 と話すのは、『中学受験で超絶伸びる!受かる家庭の習慣』で知られる勇気づけ子育てコーチング協会代表理事のたなかみなこさんだ。

■今年は親が送り出し

 緊急事態宣言を受け、各塾は、1月入試の会場での応援を取りやめたところが多く、2月の入試でもこの応援見合わせが続くだろうと予測する。

「塾によっては、出発直前にLINEで個別に声かけをしたり、ビデオ通話で激励するところもあるようですが、やはり、門をくぐる直前に声をかけてもらうのとでは、緊張のほぐれ具合が違います。例年以上に、親御さんたちには笑顔で送り出すようにと伝えています」(たなかさん)

 門の前で「しっかりやりなさいよ!」と活を入れる保護者を見かけることもあるというが、子どもはかえってプレッシャーを感じてしまい、萎縮するという。今年はコロナ禍の不安もあるので、例年以上に親からの声かけが、子どものメンタル面を左右することになると話す。

 たなかさんは「まずは、親が落ち着くことが先決です」という。焦らせるような言葉かけは禁物だ。

「親の焦りが言葉や表情に出てしまうと、子どもも焦ってしまいます。まずは、親御さん自身が“うちの子は大丈夫だ”と気丈になってください」

 こうした親からの言葉かけをたなかさんは「天使のささやき」と呼ぶ。安心できる言葉が一つでも脳に残っていると、緊張で頭が真っ白になったときにもふっとその言葉が脳裏に現れ、平常心を取り戻しやすくなるというのだ。

「最後に聞いた言葉が天使のささやきになるように、送り出してください」

 また、受験直前の時期は、親は意見を言うよりも、子どもの話を聞く側に徹してほしいとアドバイスする。

「子どもほど、親のことを愛してくれている存在はなく、親はそれだけ愛されている存在です。大好きな親からかけられる言葉ほど、力強いものはありませんから、“大丈夫だよ”と安心させてあげてください」

(フリーランス記者・宮本さおり)

AERA 2021年2月1日号より抜粋