西川氏は2015年には政治資金の問題で農水大臣を辞任している。代表だった「自民党支部」が12年9月、国の補助金交付が決まった栃木県内の木材加工会社から300万円の寄付を受けており、西川氏は同社の顧問も務めていたという。

 今回は農水族を巻き込んだお金や接待をめぐる疑惑。同じ東京地検特捜部の案件だが、菅政権の周辺では、あの「桜を見る会」よりもむしろ、この件の進展に神経をとがらせているというのだ。

■現金授受リストの噂

 ある自民党関係者は、永田町にこんな噂が流れていると教えてくれた。

「現金が渡っているのは農水の族議員だけなのかということです。もし、それが政権中枢を担う他の大臣に飛び火したらえらいことになる。特捜部はすでに現金の授受のリストを入手していて、吉川氏以外にその人数はさらに増えるのではないかとささやかれています」

 菅政権が注視するのは、この事件の発端が広島を舞台に炎上している河井克行元法務大臣夫妻の公職選挙法違反事件の関係先として、アキタフーズが検察当局の捜索を受け発覚した事実だ。前出の自民党関係者はこう続ける。

「吉川さんは二階派のベテランで、派閥の事務総長を務めた人。また、河井元法務大臣夫妻と菅首相、菅首相と二階幹事長は距離も近い。そもそも、この選挙違反事件には巨額の1億5千万円とも言われる選挙資金が絡んでいる。菅首相は党からの支出には問題ないと明言していますが、その原資や使途などまだ明らかになっていないことが多すぎる」

 今後、このアキタフーズが河井案里被告の選挙に実際に関与していないかが焦点になってくる。しかし、菅政権は年明けの通常国会が始まる前までには、何とか沈静化させようと躍起になっているようだ。(編集部・中原一歩)

AERA 2020年12月21日号