「安倍政権の法の番人とまで言われた黒川弘務氏の失脚後、特捜部の動きは活発化しました。国民の信用を早く取り戻したい検察にとって『安倍からの脱却』が必須だからです。ただ、当然ですが菅政権の顔色もうかがわなければならない。そうするとこの不起訴のシナリオは、国民に対しては検察の執念をにおわせつつ、現政権へのダメージは極力抑える──という点で完璧です。しかも、臨時国会閉幕という絶妙なタイミング。検察のこうした動きに平仄(ひょうそく)を合わせて、官邸が読売、NHKにリークした可能性が高いと思います」

 しかし、本当にこれで終わらせてよいのだろうか。安倍前首相は国会で1年以上の長きにわたり嘘の答弁をし続けていたのだ。つまり、国家を預かる首相本人が、自分自身に降りかかった疑惑に関し、国会という場で公然と虚偽の答弁をしていたのだ。安倍前首相の周辺からは「コロナで大変な時にまだ桜か」と前首相を擁護する声もあった。

■古い因習続けていいか

 だが、ある自民党関係者は、安倍前首相は会見を開き、自らの言葉で国民に説明する必要があると語る。

「良き秘書とは“親父(おやじ)”の窮地には率先して自らの首を差し出す、と言われますが、それは旧態然とした古い因習です。ただ、一国を預かる総理大臣の言葉は重い。安倍前首相は国会で『すべての発言に責任が伴う』と言っていたのだから、それを全うしてほしい」

 安倍前首相は何らかの形で説明をするべきだ。国民への説明を避け続けるならば、「特捜部の捜査から逃げるために途中で政権を放り出したのでは」と国民からうがった見方をされても仕方がないだろう。(編集部・中原一歩)

AERA 2020年12月14日号