「桜を見る会」に関する質問に答える安倍首相(当時)。この2日前、2020年度春の開催は中止すると発表された/2019年11月15日、首相官邸 (c)朝日新聞社
「桜を見る会」に関する質問に答える安倍首相(当時)。この2日前、2020年度春の開催は中止すると発表された/2019年11月15日、首相官邸 (c)朝日新聞社

 東京地検は「桜を見る会」夕食会費をめぐり、安倍前首相の秘書らを立件する方向だ。なぜ、このタイミングなのか。検察と官邸の利害が一致したからとの見方が出ている。 AERA 2020年12月14日号で掲載された記事を紹介。

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 こんなに分かりやすいトカゲの尻尾切りがあるだろうか。安倍晋三前首相の後援会が、「桜を見る会」の前日に開催した夕食会の費用を補填(ほてん)していた問題だ。東京地検特捜部は、安倍氏の公設第1秘書であり、政治団体「安倍晋三後援会」の代表の男性と会計担当者の2人を立件する方向で検討に入った。容疑はこの前夜祭の開催に関し、開催費用の一部を安倍事務所が補填している事実を知りながら、収支報告書に計上しなかった政治資金規正法違反(不記載)である。捜査関係者はこう証言する。

「容疑の対象は、2016~19年の4年分の補填費用、およそ900万円だけでなく、そもそも参加者から徴収した会費そのものも含むと思われます。そうなれば不記載の合計は3千万円超となる。決定打となったのは、ホテル側が安倍前首相の資金管理団体『晋和会』宛てに発行していた領収書でした。そこには補填額を含む参加費用の全額が記してありました。今後の動きとしては年内にも2人を略式起訴し、正式裁判は開かずに罰金刑となる見込みです」

■安倍氏に聴取を要請

 特捜部は安倍前首相本人に対し、任意の事情聴取を要請したとされ、安倍前首相も「全面的に捜査に協力する」としている。安倍前首相の関係者によると「収支報告書への不記載に関して、会計管理は全て事務所に任せており、安倍氏本人は事務所が補填している事実は知らなかった」と主張する模様だ。およそ1年にわたって国会を混乱させてきた「桜を見る会」の前夜祭をめぐる疑惑は、「悪かったのは秘書であり、私は何も知らない」という永田町のあしき伝統の論理で、このまま幕引きとなってしまうのだろうか。

 興味深いのは、この「安倍前首相の事情聴取」の初報が、またしても読売新聞、そして、NHKによって報道されたという点だ。前首相の政治進退にも関わる情報のリーク元は「検察上層部」か「官邸」しかない。別の検察関係者は官邸と検察は「安倍からの脱却」で利害が一致しているとして、こう推測する。

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