星浩(ほし・ひろし、左):朝日新聞政治部、ワシントン特派員、特別編集委員などを歴任。2016年に同社退社後、TBSの「NEWS23」のキャスターに就任/長野智子(ながの・ともこ)/「報道ステーション」「サンデーステーション」のキャスターを経て、専修大学特任教授や国連UNHCR協会報道ディレクター、「ハフポスト日本版」編集主幹も務める(撮影/写真部・小黒冴夏)
星浩(ほし・ひろし、左):朝日新聞政治部、ワシントン特派員、特別編集委員などを歴任。2016年に同社退社後、TBSの「NEWS23」のキャスターに就任/長野智子(ながの・ともこ)/「報道ステーション」「サンデーステーション」のキャスターを経て、専修大学特任教授や国連UNHCR協会報道ディレクター、「ハフポスト日本版」編集主幹も務める(撮影/写真部・小黒冴夏)
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 大接戦となり、世界中の注目を集めた米大統領選。長年、米国や米大統領選を取材してきた2人が今回の選挙を総括。また、SNSの登場やトランプ大統領の出現によって変化した大手メディアの役割とポスト・トランプ時代について考える。

*  *  *

星浩:長野さんが今回の大統領選挙をどんな風に見ていたかを、まず聞いてみたいですね。

長野智子:今までの米国の政治には、振り子の原理が働いていましたよね。どちらかに傾くと必ず揺り戻しがある。それが今回、真ん中に戻ったことが印象的でした。つまり、民主党のオバマという初めての黒人大統領の後、共和党のトランプというトリックスターみたいな大統領が誕生する、という振り子が振れたわけですよね。それが再び反対の極に振り戻されるのではなく、バイデンという真ん中になった。バイデンのことを、みんなboring but healingって言うじゃないですか。つまり、民主党の左派からしてみれば保守だと言われ、トランプ大統領からは社会主義者と言われるような人。黒か白かはっきりしないと愉快がられない時代に、つまらないと言われるグレーな存在に落ち着いたのが、トランプショックのインパクトを象徴しているなあと。星さんは?

星:私は4年前、トランプとヒラリー・クリントンの大統領選挙の取材に行ったんですが、そのとき何回か見通しを誤ったんですね。まず、米国がまさかトランプを選ぶことはないだろうと思っていたらトランプが当選した。次は、共和党にはパウエル(元国務長官)やマケイン(重鎮の上院議員)などの穏健派もいて、トランプの横暴を許さないだろうと思っていたら、あれよという間に共和党がトランプに席巻されてしまった。

長野:トランプも大統領になったら少しは変わるかも、ってみんな思ってたんですよね。ところが変わらなかった。

星:本当に(苦笑)。それで、今回はさすがに揺り戻しでバイデンが勝つだろうなと思っていて、ようやく見通し通りの結果になったんです。この経験を通して考えてみると、米国でグローバル化の恩恵を受けているのは実は西海岸と東海岸だけなんですね。中西部はむしろその影の部分になって、そこに住む人々が、ある意味でトランプに託したという側面があった。そこが、メディアが描ききれていなかった部分だろうなという気がしています。とはいえ、米国の民主主義には復元力もある。今回、最後の最後はトランプにNOを突きつけた。

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