コロナで迎えるとされる大失業時代。「勝ち組」と言われる企業に勤める人たちも人ごとではない。一寸先は闇の世界になったようだ (c)朝日新聞社
コロナで迎えるとされる大失業時代。「勝ち組」と言われる企業に勤める人たちも人ごとではない。一寸先は闇の世界になったようだ (c)朝日新聞社
AERA 2020年11月30日号より
AERA 2020年11月30日号より

 新型コロナですでに7万人以上が失職したとみられる。未曽有の経済と雇用の揺らぎに「100年に1度の大恐慌」と見る専門家もいる。AERA 2020年11月30日号は「コロナ第3波」を特集。

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「アベノミクスを継承し、更なる改革を進めてまいります」

 これは10月26日の菅義偉首相の所信表明演説での言葉だ。足元では新型コロナウイルスの感染が広がり、経済と雇用は揺らぐ。11月9日号のAERA本誌掲載の記事「自由でない新自由主義」で、経済産業研究所の藤和彦・上席研究員はこれから迎える時代を「100年に1度の大恐慌」「大失業時代」と表現し、危機のさなかの改革に疑問を呈した。

 雇用の危機は、安倍政権下で増え続けて「調整弁」とも言われた非正規雇用の人たちだけの話ではない。

 帝国データバンクによれば、新型コロナによる倒産は700件に上る。厚生労働省の調査では、新型コロナで職を失った人は、見込みも含めてすでに7万人を超えた。総務省の労働力調査によれば今年9月の完全失業者数は約210万人で、前年同月に比べ42万人も増えている。

■実体経済からの崩壊

 再び藤氏を取材した。まず、コロナ禍で大失業時代がくる理由についてこう説明する。

「この20~30年間はIT(情報技術)革命で生産性を上げる時代で、一方で雇用から締め出された人たちがいました。そういう方々の受け皿が飲食業などのサービス市場でした。そうした業種が今回、コロナで直接大打撃を受けています。最後の受け皿だったサービス市場が傷み、次にどこに新しい雇用があるかというと、今のところまったく見えてきません」

 藤氏は、金融緩和で雇用を増やして景気を持ち直させた2008年のリーマン・ショック時と、今回のコロナ禍による不況との違いにも注目する。

 リーマン・ショックでは、世界中で経営不安を抱える金融機関が企業に融資したり投資したりできなくなった。それで企業の株価が急落し、経済活動が縮小した。

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