■中小企業の再編や統合

 注目はアトキンソン氏。菅首相は、国内企業の99.7%を占める中小企業の再編や統合を進めようとするが、そこにアトキンソン氏の影響が指摘されている。経済産業研究所の藤和彦・上席研究員はこう話す。

「政策的に正しくても、コロナ禍による失業増が懸念されるときに、雇用の受け皿だった中小企業が再編されて大リストラが行われれば、どうなるのでしょうか。菅内閣がやっている各論の構造改革ばかりでは、これからやってくる100年に1度の大恐慌に太刀打ちできません」

 元文部科学次官の前川喜平さんは同じ視点から、日本商工会議所会頭の三村明夫氏の存在を気にかけているという。

「三村氏には中小企業の人たちの立場を代弁することが期待されているでしょうから、アトキンソン氏と対立する場面もあるでしょう。場合によっては『日商会頭も賛成したのだから』と、中小企業者を納得させるためのアリバイづくりに利用されることがあるかもしれません」

 元総務相の竹中平蔵氏についても触れざるを得ないだろう。最近では、BSの番組でベーシックインカムの導入に言及した際、「実現すれば生活保護や年金給付が必要なくなる」という趣旨の発言をして世論の反発を買った。格差社会を肯定、推進するような人物と考えられがちだが、識者はどうみるか。

 元総務官僚の平嶋彰英・立教大学特任教授は「菅総理も頼りにし、影響力もある人。やっていることが国民に分かるように政治的責任も問われる立場でやってほしい。自由をあまり大切にしないご都合主義的な“新自由主義”と感じます」と指摘する。

■旧中間階級の切り捨て

 階級・階層論が専門の社会学者、橋本健二・早稲田大学教授も菅内閣のブレーンたちに新自由主義的な傾向を強く感じる。

「零細企業や農協などかつての自民党の支持層だった“旧中間階級”を切り捨て、専門職や管理事務職に従事する“新中間階級”への乗り換えが決定的になりました。一つの階級の崩壊につながります。もう一つ気になるのは、非正規雇用者の問題です。顔ぶれからは、今はまだ規制がある建設業などの分野にも切り込んでくる予感がします」

次のページ