国をまたいでマスクを買い求めるバイヤーや代理人たちに詐欺師までが交じり、不思議なマネーゲームが起きているのだ。代理人はこう続ける。

「だから売り主が『LOI』と口にした途端に話が流れるケースも多い。結果的にこの2カ月ぐらいは全く取引が成立しておらず、実際私も最近『1860』の現物を見たことがありません」

 しかし、実際に命を扱う医療現場ではゲームに興じている余裕はない。必要な資材は確実にそろえなければならない。ある病院グループの資材購入担当責任者はこう言う。

「当グループでも複数の病院が偽陽性も含めた新型コロナウイルス患者を受け入れていて、そうした病院については政府から必要十分なN95が配布されるようになりました。しかしその他の病院や老人保健施設用には自前で用意しなければならない。3M製は値段も合わないし実際入手困難です。幸い、国産メーカーのものを来年4月までは毎月納入してもらえる算段がついたので、少しホッとしているところです」

(編集部・大平誠)

AERA 2020年9月14日号より抜粋