これを警戒したトランプ氏が「郵便投票では不正がまかり通る」「死人も犬も投票できる」と発言し続けていたところ、郵便ポストが撤去される映像が広がった。
民主党が多数派の下院は、ルイス・デジョイUSPS長官を召喚し、議会で証言を求めた。同長官は、コスト削減ということで続けていた改革を投開票日後まで一切やめると証言。郵便ポストがなくなるショックや不安は当面は取り除かれた。
しかし、市民の間では不安は広がっている。筆者が8月中旬にニューヨーク州内に送った小包が、知人宅に届いたのは7日後だった。まるで国際郵便並みの時間のかかり方だ。市民の間でも同じような体験がソーシャルメディアでシェアされ、「投票所に行くしかない」というコメントも多い。
ちなみに、デジョイ長官は、USPSのたたき上げではなく、ブッシュ政権時代から共和党の資金集めで功績を収めてきたビジネスマン。トランプ氏が選んだUSPSの監査委員会が今年5月、デジョイ氏を長官に選んだ。
「忖度(そんたく)」という文字が、有権者の頭に浮かぶ。郵便投票だけでなく、11月の投開票が無事に終わるのかが最大の焦点だ。(ジャーナリスト・津山恵子=ニューヨーク)
※AERA 2020年9月7日号