「過去問も教科書の範囲内だったので驚きはないですが、『出さない』とはっきりしたのでほっとしました」(女子生徒)

 河合塾教育情報部長の富沢弘和さんは、各大学の配慮によって次年度の入試が例年と比べて大きく変わるわけではないと指摘する。

「地方の国公立大はもともと発展問題の出題は多くはありませんでしたし、旧帝大クラスの出題も基礎知識をベースに考えれば解答できるものや補足説明などの配慮がありました。文部科学省が今回、配慮を要請したので、各大学も従来の対応を改めて明示し『要請に応えた』という形をとったのでしょう」

■横国大「苦渋の決断」

 一方、受験関係者に衝撃が走ったのが横浜国立大の「受験生を会場に集めての個別学力検査は実施しない」という決定だ。同大によれば、例年約7500人の出願者のうち5千人が県外から出願してくる。県を越える移動によって受験生本人だけでなく地元の家族にも感染を広げる危険を回避するための「苦渋の決断だった」という。

 具体的には経済学部、経営学部、理工学部、都市科学部では個別試験で予定していた科目を共通テストの成績で代替する。例えば経済学部の前期試験の場合、共通テスト900点、個別試験は数学と外国語それぞれ400点ずつで合否を決める予定だったが、共通テストの数学と外国語各200点満点を各600点満点に換算し、個別試験の代わりとする。

 集団面接や小論文、実技などを予定していた教育学部の個別試験は、レポートや実技の写真・動画の提出などで代替する。

 東日本大震災が起きた2011年や、新型コロナウイルス感染が拡大していた今年3月の北海道で、急遽、後期試験を取りやめセンター試験の結果のみで合否判定するケースはあった。しかし、今回の横国大の決定は、入試の半年以上も前。その理由について同大はこう説明する。

「東日本大震災の時と違うのは今から準備ができる点。前もって決定することで、受験生は今後コロナの感染状況が変化しようと本学の選抜方法は変更されないという安心感が持てる。その分集中して勉強できることが最も重要だと考えた」(同大学務部入試課)

次のページ