稲垣えみ子「コロナ時代の最大の贅沢は、生身の人間に会うことである」 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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稲垣えみ子「コロナ時代の最大の贅沢は、生身の人間に会うことである」

連載「アフロ画報」

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稲垣えみ子AERA#稲垣えみ子
稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行

稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行

コロナ禍で、テレビに疲れラジオを聴く人が増えているらしい。ラジオ好きとしては嬉しい!(写真:本人提供)

コロナ禍で、テレビに疲れラジオを聴く人が増えているらしい。ラジオ好きとしては嬉しい!(写真:本人提供)

 元朝日新聞記者でアフロヘア-がトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。

【写真】コロナ禍でテレビに疲れラジオを聴く人が増えているらしい

*  *  *
 近頃人に非常に喜ばれたことといえば、ラジオ番組のリモート出演を依頼されて断ったことであった。出演を断ったわけじゃなくリモートを断ったんである。なにしろただでさえ話がヘタ。ホストの方に目の前で大げさに相槌を打って頂いて初めて、ヨレヨレながらも安心して話すことができる。そんな私が、そしてリモート飲み会ですらついていけなかった超機械音痴の私が、リモート出演など考えただけで滝の汗である。なのでこの時期に申し訳ないと思いつつ、「スタジオに伺うわけには……」と打診すると、あ、いいですよとお返事があり、恐る恐るスタジオへということが、2回、あった。

 で、出演後、肝心の話の内容は別として、「こんな時期に来てくれた!」という一点において、出演者の方、スタッフの方ともに諸手を挙げて喜んで頂いたのだ。

 何度も言うが話が下手なので、ラジオ出演でこんなに喜ばれたことは記憶になく、なので少し複雑ではあったがそれでもやはり嬉しかったし、驚いた。だって私がスタジオへ行く行為そのものが皆様にリスクを与えることは間違いないのである。現場では体温測定があり、本番もアクリル板越しに話をするんだが、それでもリスクはゼロではない。だからこそリモート出演を依頼されたのだろう。なのにあえて出かけていくのは私の自信のなさからであり、本当にスイマセンと思いながら出かけたのだ。ところが先方の反応は全く違った。やっぱり会って話す方が断然いい、良かった楽しかったと全員から握手を求められる勢いであった。

 一体何だったのだろう。

 先日の新聞に「新しい生活様式」が定着した近未来を舞台にした短編が載っていた。主人公は誰かと話をしている。シールドもマスクもなしで話せるなんて信じられないと感激し、握手してくれないかと頼む。実はこの相手はロボットなのだというオチに私は胸を突かれた。それほどまでに、人は人と顔を合わせ話すことを恋うる存在なのだ。

 コロナ時代の最大の贅沢はこれなんじゃないでしょうか。

AERA 2020年7月6日号


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稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行

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