■何のための貯金かみえていない人が多すぎる

 60万部のベストセラーとなった『はじめての人のための3000円投資生活』(アスコム)で、貯金だけでなく投資の必要性も説いたファイナンシャルプランナーの横山光昭さんは、「一口に貯金と言っても、2種類あることを意識したほうがいいですよ」と言う。

「ここ2~3年で使う予定のあるお金なのか、それとも将来、老後資金に使うような先々に必要なお金なのか――。お金に色はついていないので、目的を分けて考えていない人がかなり多いんです」(横山さん/以下同)
 
 たとえば、1000万円の貯金をすべて預金金利が0.01%の銀行の定期預金に預けているとしたら、「もったいなすぎます」と横山さん。

「長年、デフレといわれてきた日本でも、最近は住宅の価格が高騰。食費や水道光熱費も上昇していますね。物価高が続いてインフレになると、お金の価値は目減りします。

 すぐ使う予定のない4ケタ万円の現金を持ちながら超低金利の銀行口座に全財産を置きっぱなしにするなんて、もったいない」

■数年以内に使うお金だけ確保

 ただ、1000万円のうち、300万円ぐらいは子どもの教育費や車の購入費など、ここ2~3年で使う予定のお金として銀行預金に確保しておこう。

「5年以上は使いそうにない残りの700万円は投資信託の積み立て投資に回すなど、お金の寿命を延ばす努力も必要です」
 
 では、「毎月数万円の貯金が精いっぱい」の人はどうすればいいのだろう。

「たとえば月2万円の貯金をしている人なら、1万7000円はそのまま定期預金に積み立てて、3000円だけをリスクの低い投資信託に回す、といった両輪でお金を貯めていくのが一番いい。

 全額を定期預金にしてしまうと、毎月2万円で年間24万円、4年でようやく100万円弱。このペースでは老後資金が足りないですよね。毎月3000円だけ『リスクが少しだけある貯金』に、お金を振り向けてみましょう」

(取材・文/安住拓哉、伊藤忍)

※アエラ増刊『AERAMoney 今さら聞けない貯金の基本』の記事に加筆・再構成

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安住拓哉

安住拓哉

出版社勤務を経て2021年に独立。経済関連記事全般が得意。取材・執筆歴20年以上。雑誌の取材記事の他、単行本のライティングも数多く手掛ける。

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