で、そういうときは勝ちを狙わずに負け方を最小限に抑える。負け方にルールを決めるのもいいと思います。小さいところで勝つ。例えば一日一個、人に親切にする。その体力がなければ、一日一回どこか拭き掃除する。冷蔵庫を磨くとか。それも立派な「勝ち」。「ああ今日も何もできなかった」ってつぶやく一日の終わりが負けだとすると、「でも今日冷蔵庫磨いたよな」ってなれば、勝ちで終われる。そういう1千分の1の勝ちにこだわっていく。それが「負けない」ことなんです。

 僕の昔の知り合いに、すごく勉強を頑張ってきたのになかなか仕事が決まらないときがありました。その人は「このままでは自分がダメになる」と思って、一日一回玄関を徹底的に磨いたらしいんです。そうしたらね、職の話がきたんですって。オカルトに聞こえるかもしれないけど、自分の中で誇りっていうのかな、それをちゃんと残しておくということだと思うんです。

 だからどうしても運の体力がないときは、どこか磨いていれば、とりあえず大丈夫。床とか冷蔵庫とか。水回りでもいいですね。そのうちに運の体力が付いてきて、「行けそうな気がする!」って吹っ切れるときがやってきます。

AERA 2020年3月2日号

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しいたけ.

しいたけ.

しいたけ./占い師、作家。早稲田大学大学院政治学研究科修了。哲学を研究しながら、占いを学問として勉強。「しいたけ. 公式サイト」では月刊占いやコラムを連載中。 https://shiitakeofficial.com/

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