高校までに学ぶ教育が基礎的な知識・技能の積み重ねなのに対し、大学では先端研究によって数年前まで常識だった理論があっという間に古臭くて使えなくなる。短いスパンでどんどん新しい領域が生まれていきます。世界と競争する研究を期待される大学と、基礎を積んでいく高校までの教育は方法も内容も異質です。だからこそ移行のプロセスが必要になる。なのに、受験生はいきなり学部別入試でふるいにかけられるのです。

 受験競争の過熱を沈静化させるために始まった共通一次は1979年から10年間続きました。この間の大学・短大進学率は36パーセント程度でしたが、センター試験が始まると、急激な少子化も重なり18年には57.9パーセントになった。18歳人口は85万人も減っているのに、大学・短大の在学者数は一貫して約300万人をキープしています。過熱は緩和されて大学は大衆化した。その半面、高大接続の必要性は増しているのです。

 大学入試センターは30年間、重要な高大接続の機能を担ってきました。学生を選抜する大学の責任として、全国から大学教員を集め、問題作成には1科目あたり約20人が意見を出し合って進めてきた。その分野でトップの業績を上げるような研究者が、高校の学習指導要領の範囲内の材料を用いて必死に問題作りに取り組めばおのずと問題の質も精度も高くなる。最近明らかになった記述式問題の無計画さとは相いれません。

 共通テスト見直しは、高大接続を考える原点に立ち戻る良い機会です。中等教育の中でも積み重ねの大事な医療系や理科系進学希望者は、就学期間を4年や5年に延長するなど、やるべき議論はたくさんあるのです。(編集部・大平誠)

AERA 2019年12月30日号-2020年1月6日合併号