そんななかで発覚したシベリアでの不祥事に、JYMAは「これ以上不正に与することはできない」と苦渋の選択をした格好だ。

 2016年、戦没者の遺骨収集を「国の責務」とする戦没者遺骨収集推進法が施行されたが、収集数は年間千体を割り込んだ。しかも、精度が向上しているとは言い難い。

 赤木さんはミャンマーで起きた驚くべき事実を明らかにした。17年度事業では4次調査の後に18年3月に収集が行われ、ミャンマー人の鑑定人と厚労省が派遣した鑑定人が人骨や獣骨の区別をし、12体を「遺骨」として収集した。だが、18年度事業の1次調査で、同年10月から赤木さんらと現地を訪れていた人類学者の楢崎修一郎氏(今年3月に急逝)が「獣骨」と油性インキで書かれたビニール袋四つが埋設されているのを発見。再鑑定したところ、少なからぬ人骨が含まれていた。

「少なくとも寛骨5対と、かなりの量の四肢骨など多数の人骨が混入していました。19年3月に収集した18年度分は、楢崎先生が日本人と分類した29体のご遺骨を日本に送還しました。これについては科学的鑑定に備え、未焼骨のまま送還することに厚労省も同意しました」(赤木さん)

 この「ミャンマー事件」は、フィリピンやシベリアで明らかになったような取り違えや混入だけでなく、日本人将兵の可能性が高い遺骨が、見る目がないが故に廃棄されてしまう危険性もあるということを意味している。(編集部・大平誠)

AERA 2019年12月9日号より抜粋