AERA 2019年12月2日号より
AERA 2019年12月2日号より

 ファブ・ファイブと呼ばれるゲイ5人組をご存じだろうか? ネットフリックスのリアリティー番組「クィア・アイ」の出演メンバーだ。番組では依頼人の課題を通して、社会問題をも浮き彫りにする。彼らの思いのこもった英語には、自分を大切にし、変化を促す名言が満載だ。AERA 2019年12月2日号では「伝わる英語」を特集。

【自己肯定感が上がるFab5の名言はこちら】

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「50分間、一度も警戒せずに見ていられる。それは、誰かを傷つけるフレーズが一つも出てこないから」

 とその魅力を分析するのは、クィア・アイの大ファンという占師で作家のしいたけ.さん。

「Fab(ファブ)5はそれぞれ競争を勝ち抜いて、名声や実績を手に入れたスペシャリストたち。普通は『もっとこうしなきゃだめだよ』と否定すると思うんです。でも、そうはせずに、自分のところまで降りてきて話を聞いてくれる。傷ついた人が傷ついた人に送る言葉であり、姿勢であると思います」

 否定したり、誰かのまねをしたりしろとは決して言わない。否定の代わりに彼らが頻繁に言うのが“Love yourself.”。番組最大のテーマがセルフラブとセルフケアだ。

 ケアには、気にかける・愛するという意味がある。登場する依頼人たちがファブ5と一緒に生きづらさや心の傷を解きほぐしていくと、自分に愛情を注いでいないことに気づく。彼らに自分自身の生活も大事にする必要性を語り、“You deserve~.”、あなたにも~の権利がある、と訴えかける。

 日本が舞台の「クィア・アイin Japan!」は全4話。姉の死をきっかけにホスピスを運営しているヨウコ、ロンドンのボーイフレンドと遠距離恋愛中のカン、いじめが原因で心を開けずにいるイラストレーターのカエ、人見知りで妻とのセックスレスに悩むマコトの4人が依頼者だ。

 改造番組ではあるが、外側だけを変えるのではない。相手の心情を汲みながら、自ら問題に気づくきっかけを与え、本質的な変化につなげていく。

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