Q3:補償される水災


どんな水災、風災なら保険金が下りる?

 水災の代表的な原因は洪水、高潮、土砂崩れ。建物なら「集中豪雨による土砂崩れで建物が泥まみれになった」「河川の氾濫で浸水」「大雨で高潮が発生、海水が防波堤を越えて建物が水浸し」などだ。家財なら「床上浸水により戸建て1階の家電や家具が使えなくなった」。

 風災で多いのは、「突風により屋根の瓦が飛ばされた」。建物に保険をかけていれば、瓦の修理費用などが下りる。「屋根瓦が飛ばされたことにより穴が開き、屋外の危険物や雨が室内に侵入。部屋がぐちゃぐちゃになった」場合、家財に保険をかけていれば補償される。

Q4:補償されない水災
豪雨で車が水没しても補償される?

 車に関しては火災保険の対象外。自動車保険の「車両保険」で補償される。

 いかにも補償されそうなのにNGなのは、大雨による雨漏りで家具が台無しになっても、家財保険で補償されないという事例。これはなぜ?

「雨漏りは、屋根まわりの経年劣化により起こることが多いものです。水災の保険、風災の保険は、あくまで『自然災害による突発的な被害に備えるもの』なので、大雨が降って、もともと屋根のコンディションが悪かったところがゆるみ、雨漏りとなっても補償の対象外になります」(寺澤さん)

 築20年以上経過した戸建ての屋根の点検・補修を怠らないのは、災害国日本において基本の自衛策といえそうだ。

Q5:よく似た補償
通常の水災補償と水濡れ補償の違いは?

 上の部屋の排水管が壊れて部屋が水浸しになった場合、水災の保険では補償されず、「水濡れ補償」の契約が必要な場合がある。通常の水災と水濡れはどう違うのか。

「水の被害が上から来るか、下から来るかで考えてみてください。排水管の故障は水が上から降ってきます。床上浸水は大雨により水が下から上に増えていきますよね」(寺澤さん)

 屁理屈じみていて申し訳ないが、屋根瓦が飛んだときは“上からの水の被害”では?

「それは風災の区分になるんです。大雨が部屋に入ってきたのは突風で瓦が飛んだことによるものなので、水災ではなく風災扱い。損害保険は被災の『原因』で種類が決まります」(同)

 なるほど……深く納得。(経済ジャーナリスト・伊藤忍、編集部・中島晶子)

AERA 2019年11月18日号より抜粋

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中島晶子

中島晶子

ニュース週刊誌「AERA」編集者。アエラ増刊「AERA Money」も担当。投資信託、株、外貨、住宅ローン、保険、税金などマネー関連記事を20年以上編集。NISA、iDeCoは制度開始当初から取材。月刊マネー誌編集部を経て現職

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