「次にやりたいことは何だろう」と考えていた時、米ハーバード大の、社会課題の解決策作りを1年で学ぶコースに出会った。

「私の問題意識にぴったり。挑戦するなら今しかない」

 17年末に退職して留学した。

 帰国後は、女性の成長を助けたいとリーダーシップを教えるプログラムを始めた。西武鉄道などの社外役員をやりながら、社会起業家やNPOを支援する団体に専門的な知見を活かしてアドバイスをしている。ビジネスやNPOといった境界を越え、人や資金をつなぐ試みを始めたいという。

 バブルとは85年のプラザ合意以降の金融緩和策で景気が過熱し、カネが不動産や株式市場に流れ込んだ時代。89年12月に東証株価は最高値を記録したが、その後は下がり続け、景気も悪化していく。就職市場も91年に活動した世代までは良かったのだが、以降は就職氷河期へと突入する。

 85年から91年前後に20代を迎えた世代は今、50代だ。リクルートワークス研究所の「ワーキングパーソン調査2014」は、従業員1千人以上の企業で大卒の役職者とそれ以外の分布を調べているが、92年では40代の7割程度が役職者になれるが、12年では係長を含めても5割程度だ。入社は容易だったが、入ってからの競争が厳しいのだ。

 バブル世代を著書『バブル入社組の憂鬱』で評論した経営コンサルタントの相原孝夫さんは言う。

「NPO法が出来た98年には働き盛りで余裕もなく、多くの人がボランティアに参加した11年の東日本大震災の時も、08年のリーマン・ショックをまだひきずり、必死で働いていた。この世代は社会貢献になかなか縁がなかった」

 鵜尾雅隆(うおまさたか)さん(50)は40歳でNPOの資金調達を支援するNPO「日本ファンドレイジング協会」を起業した。

「学生の時は、起業なんて思いもよらなかった。みんな大企業に苦労せず入れて、それが普通だと思っていた」

 というから、バブルを実感していた学生の一人だろう。もっとも大企業の道は選ばず、JICA(現国際協力機構)に就職した。学生時代はバイトをして世界中を放浪、海外に行けるところで働きたいと思っていたが、JICAを見つけ、ここならと腑に落ちた。

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