「NGOとかではなくて、ちゃんとした大組織に身を置きたいと。安定志向というか、当時の主流派です(笑)」

 02年に米国留学。仕事で海外のNGOと一緒に仕事をすることが多かったので、NPOの経営を学びのテーマとした。自己紹介の時に、何を学びたいかを順番に話した。

「何を言おうかと思っていたとき、ふとファンドレイジング(FR、資金調達)がいいんじゃないかと。私には夢がある、アジアのFRを変えたい、と言ったらみんなが振り向いて、次々に『これをやれば』『この人紹介してあげる』。これはやるしかない、と」

 留学中には、もう一つ人生観を変える出来事があった。同行した妻が突然倒れ、昏睡(こんすい)状態に。99%治らない、と宣告された。奇跡的に回復するが、

「人生は有限なんだと気づいて。自分は何をしたいんだろうと考えたんです」

 帰国後、ブログ「ファンドレイジング道場」を立ち上げ、FRのノウハウなどを書きだすと、多くのNPOから相談が舞い込んだ。その事例もさらに勉強になり、「日本で一番自分がFRに詳しい」と、09年に起業、10年が経った。NPOの財務状況に詳しい鵜尾さんだが、「NPOに転職すると収入が減ると思われがちだが、ITやマーケティングなどの専門性を生かしたNPO等も増えており、そうした人たちは普通の企業と同様かそれ以上の収入を得ているケースもある」という。(朝日新聞編集委員・秋山訓子)

AERA 2019年11月4日号より抜粋