そこにはAIなどでは代替できない人間の営みがあり、伝承されてきた技術やサービスには次世代に伝えるべき価値があるからだ。

 藻谷さん自身、1997年から21年間経営した会社を、2018年3月に地元・長野の女性に事業譲渡している。

「今、地方では廃業が増えています。新規に起業するのは大変ですが、既存の事業を承継してイノベーションを起こせるならば、都会で働く40~50代のビジネスパーソンにもチャンスがあるのではないかと思います」

(ライター・矢内裕子)

■八重洲ブックセンター・川原敏治さんのオススメの一冊

『僕らはそれに抵抗できない「依存症ビジネス」のつくられかた』は、現代人がデジタル機器とうまく付き合うための指南書と言ってもいいだろう。八重洲ブックセンターの川原敏治さんは、同著の魅力を次のように寄せる。

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 直感的には分かっているつもりだったが、現代人が、どれほどデジタル機器に依存しているかに本書を読んで改めて気づかされた。現代の依存症は、物質に頼らない行動嗜癖という行動に依存するタイプなので自分でも気づきにくい。生まれた時からデジタル機器が存在する世代にとって、危機感はなく依存しているつもりもないのかもしれない。

 メールやSNSを完全に捨てることはできない。多かれ少なかれ、付き合っていかなくてはならず、タイトル通り「抵抗できない」というあきらめも感じてしまいがちだ。だが、本書ではSNSやゲームなどが、いかに依存性が高いかを詳しく解説し、依存から抜け出し、うまく付き合うための対策を示している。

 まずは各自が問題意識を持ち、デジタルとの付き合い方を考えるためにも、読むべき一冊。

AERA 2019年8月26日号