ひきこもり長期化の背景を専門家が分析 「就労支援がゴールではない」理由

AERA#シニア
 中高年のひきこもり状態の人の推計は61万3千人。深刻化するひきこもりの長期高齢化は、子と親が孤立する「8050」問題として表面化してきている。その背景や支援に求められることとは。KHJ全国ひきこもり家族会連合会共同代表の伊藤正俊さんが語る。

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 川崎市でスクールバスを待っていた児童や保護者がひきこもりだったという男性に殺傷された事件や、東京練馬区で70代の父親が同居する40代の息子を刺殺した事件など、痛ましい事件が続いた後、KHJの本部にも多数の問い合わせが寄せられました。ひきこもる子がいる親も不安を募らせ、「もう、これ以上は待てない」というギリギリのところで相談の電話をかけてこられます。とても不幸な事件でしたが、ある意味、苦難を抱えた人にとっては外にSOSを出すきっかけにもなったように感じます。

 内閣府の調査で、中高年の当事者がひきこもり状態になったきっかけで最も多かったのは「退職したこと」。就職氷河期の人は、本当に苦労されているんですね。苦労して職を得ても、派遣切りやリストラ、人間関係など何らかの理由で職場から離れた人が社会に復帰するのは難しい。復帰した職場がブラック企業だったり、劣悪な環境で働く中で、またひきこもらざるを得ない状況に陥る。

 ひきこもり状態が長期化する理由の一つに、日本人独特の恥文化もあるでしょう。我が子がひきこもり状態だと隣人に話せない雰囲気があり、隠し通す。もう一つの理由に、支援体制が画一的であることが挙げられます。就労を急かされ、働くことをゴールとされ、限られた時間の中で訓練を強いられる。就労で傷つき、支援でも傷つけば、回復が妨げられてしまいます。

 ただ、親子ともに老い、双方が切羽詰まってくると、事が動きだすこともある。つい最近も、80代の母親が「子どもが働ける場所があるなら、どんな形でもいい」と助けを求めてきました。今、中小企業は人手不足で、「短時間でも手を貸してほしい」というニーズも生まれています。10年以上家で過ごし、体力が落ちた人には柔軟な働き方のほうが入りやすい場合もある。うまくマッチングすれば、当事者の特性に合った働き方につながるかもしれません。働くなら「月~金の8時間」という価値観が染み付いているかもしれませんが、親や本人に「今は働き方にも多様性がある時代」だと受容してもらうことも大切です。

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