技能実習生が入国までの6カ月から1年を過ごす日本語教育施設。全寮制で、朝から晩まで日本語と日本文化を学ぶ。階段の蹴り上げ部分にも日本語があった(撮影/ジャーナリスト・澤田晃宏)
技能実習生が入国までの6カ月から1年を過ごす日本語教育施設。全寮制で、朝から晩まで日本語と日本文化を学ぶ。階段の蹴り上げ部分にも日本語があった(撮影/ジャーナリスト・澤田晃宏)
Lacoliのフン社長(左)と渡邊副社長。「自分たちは真面目にやっているから、日本側にも真面目にやってくださいと言えます」とフン社長(撮影/ジャーナリスト・澤田晃宏)
Lacoliのフン社長(左)と渡邊副社長。「自分たちは真面目にやっているから、日本側にも真面目にやってくださいと言えます」とフン社長(撮影/ジャーナリスト・澤田晃宏)
Lacoliで学ぶ実習生に働き先として日本を選んだ理由を聞くと、二人ともが日本のアニメの名前を挙げた。文化の影響は大きい(撮影/ジャーナリスト・澤田晃宏)
Lacoliで学ぶ実習生に働き先として日本を選んだ理由を聞くと、二人ともが日本のアニメの名前を挙げた。文化の影響は大きい(撮影/ジャーナリスト・澤田晃宏)

 日本に来る技能実習生は現地の送り出し機関に多額の手数料を払う。そのお金が、日本側の機関や企業への過剰な接待や裏金に使われている。理不尽な負担をなくそうと立ち上がった人たちもいる。ジャーナリスト・澤田晃宏氏がリポートする。

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 ベトナムの首都・ハノイ市内にある高級ホテル。技能実習生の送り出しに関わる人であれば、誰もがその名を聞いたことがあるという。

 水曜日の午後7時ごろ、正面玄関から距離を置き、出入りの様子を窺った。約30分の間に、ベトナム人に案内され、入り口左手にある階段に吸い込まれていく日本人の団体を2組確認した。

 筆者も階段を下りる。胸元を露わにしたドレスをまとう若い女性たちに「イラッシャイマセ」と出迎えられた。店内は暗く、正面にあるステージの左右にはカラオケ付きの個室が並んでいる。その一つに案内されると、スタッフが女性を10人ほど連れて入ってきた。お酒を飲む相手を選べと言う。店は東南アジアにはよくある「KTV」と呼ばれる形態で、女性が隣に座り、一緒にカラオケやお酒を楽しむ。ただ、この店は単なるKTVではない。

「オニイサン、カッコイイネ」

「ワタシ、トテモ、スケベデス」

 この店の女の子はたいてい日本語が話せるとは聞いていたが、その語彙はひどく偏っていた。ベトナム人の女性スタッフは筆者にこう説明した。
「気に入った女性がいれば部屋に連れて帰れます。別のホテルでも大丈夫です。ショート(2時間)は100ドル(約1万1千円)、ロング(朝まで)は200ドル(約2万2千円)です」

 1時間ほど飲んで店を出た。ベトナム人通訳と筆者の2人で約3万円。女性を連れ出さない場合でも、チップとして68万ドン(約3200円)を女性に払わなければならなかった。ベトナムの大手送り出し機関幹部は話す。

「日本の監理団体や企業が実習生候補者の面接でベトナムに来た時は、送り出し機関が接待をします。女性の連れ出し費用までは払いませんが、食事、観光、マッサージ、夜のカラオケは基本、送り出し機関が負担します」

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