前述の通り、監理団体は非営利団体である。そうしたお金を、どういった名目で受け取るのか。別の送り出し機関の幹部が舞台裏を明かす。

「基本、手渡しです。面接などでベトナムに来たときに渡すこともあれば、日本に持ち込める上限50万円を複数の実習生に持たせることもある。うちの場合、300万円を超える高額な場合は日本の駐在員の口座に送り、駐在員が持ち運ぶことにしています」

 負担は、回りまわって、実習生が負う。ベトナムの労働・傷病兵・社会問題省は、送り出し機関が実習生から徴収できる手数料の上限を、3年の技能実習の場合は3600ドル(約40万円)と定めているが、実際はどうなのか。

 送り出し機関幹部のチャン・テ・アインさん(28)は、14年から3年間、技能実習生として来日した。仕事の合間を見つけては、音楽に合わせて日本語とベトナム語を交互にしゃべる独自の映像をユーチューブにアップした。ファンページへの登録が10万人を超えるなど、日本を目指すベトナム人の間ではちょっとした有名人だ。

 そんな彼が昨年5月、自身のフェイスブックで繋がる実習生を対象に手数料に関するアンケートをした。51人から回答(未記入3人)があり、支払った手数料の平均は8040ドル(約90万円)で、1万ドル(約110万円)以上払った人も13人いた。最も高いハノイでも月額の最低賃金が418万ドン(約2万円)という賃金水準のベトナム人には、あまりに高額だ。

キックバックや接待にお金がかかるといっても取り過ぎです。最高額は1万5千ドル(約165万円)で、それだと日本に行っても借金の返済だけで終わる。失踪者の背景には、こうした問題があります」(アインさん)

 日本への支払いだけでなく、ベトナム側の募集コストも大きい。

「実習生の大半は地方出身で、募集は学校の先生などのブローカーに頼らざるを得ません。紹介料は1人当たり10万円が相場です」(送り出し機関幹部)

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