子ども同士も日常的に「アイラブユー」を言い、ハグをするアメリカ (写真/筆者提供)
子ども同士も日常的に「アイラブユー」を言い、ハグをするアメリカ (写真/筆者提供)

 日本には「愛情弁当」なんて言葉があるけれど、親の愛情はお弁当以外で伝えてもいいのでは――。そんな話を先週しました。それじゃ、お弁当以外の方法ってなんなのさ?と思われた方々もいるかもしれません。

 子どもへの愛情の伝え方。あまりに深い問いで、そのテーマだけで電話帳みたいに分厚い本ができそうですが、今すぐできる簡単な方法が2つあります。1つは「大好き」と言うこと、もう1つはぎゅっと抱きしめることです。

 そう思うようになったきっかけは、夫とのケンカでした。夫が「僕らの結婚生活には愛情が不足している」と言い始めたのです。

 こちらとしては、十分愛情を注いでいるつもりでした。手の込んだものじゃないけれど毎日心を込めてごはんを作っているし、アメリカ人らしく肉好きな夫のために、よくわからん部位の肉を買って調理しているんです(アメリカのお肉は日本とカットの仕方が違う!)。洗濯もほぼ私担当だし、床に転がっている夫の靴下なんて、いったい何千回拾って洗濯カゴに入れたことか。裏返しになってるのを直してね。それでも愛情が足りないっていうの?

 すると、夫の返答はこうでした。「それは愛じゃない」。

 私にとって、それは受け入れがたい返答でした。だって、自分の母親は衣食住――特に食をケアすることで、私の父をはじめ、家族を大切にしてくれていたからです。日々おいしくて健康的なごはんを作ることが家族への愛情だと思って育ちました。

 向田邦子は、愛といえば夜更けにお母さんが鉛筆をけずってくれた音を思い出すと書いているし、西野カナもダーリンが好きだから脱ぎっぱなしの靴下も片付けちゃうなんて歌ってなかったっけ。日本人ってそういうもんなの。不言実行、相手のために物言わず尽くす背中を見せることで愛情を伝えるんだよ!

 夫の言い分はこうでした。

 その一、炊事洗濯は相手を愛していようがいまいが発生する日常業務であり、それを愛情だと神格化するのはおかしい。

 その二、それらの業務はすべて外部委託できるので、妻である君にしかできないことで愛情を表現するべきだ。

 そして、こう付け加えました。

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大井美紗子

大井美紗子

大井美紗子(おおい・みさこ)/ライター・翻訳業。1986年長野県生まれ。大阪大学文学部英米文学・英語学専攻卒業後、書籍編集者を経てフリーに。アメリカで約5年暮らし、最近、日本に帰国。娘、息子、夫と東京在住。ツイッター:@misakohi

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1秒で伝わる愛情とは?