中国のシェア自転車は、貼り付けられたQRコードをスマホで読み取ることで利用できる(gettyimages)
中国のシェア自転車は、貼り付けられたQRコードをスマホで読み取ることで利用できる(gettyimages)
北京の目抜き通りでQRコードを手にする張さん。月100~200人が寄付をしてくれるという(撮影/福田直之)
北京の目抜き通りでQRコードを手にする張さん。月100~200人が寄付をしてくれるという(撮影/福田直之)

 PayPay、LINE Pay、メルペイ……「〇〇ペイ使えます」の表示を見る機会が増えている。キャッシュレスサービスの「ペイ」で支払うメリットや、クレジットカードとの違い、日本の先を行く中国の「ペイ」事情など、気になる「ペイ」の活用術を紹介していく。

【写真】中国ではQRコードを持って街角に立ち寄付を募る人もいるようだ

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「俺1人だけ、縄文人だ」

 都内の男性(43)はつぶやいた。東京・新宿の居酒屋で開かれた、通信大手の広報担当者の送別会。幹事から「1人4千円でーす」の声が響いたとき、財布を取り出したのは約20人の参加者の中で、自分1人だけだった。

「PayPayでお願い」
「私はLINE Payね」

 そんな声を受けた幹事が手際よくスマホ決済で参加者とお金をやりとりしていく。財布から1万円札を出し、じっとお釣りを待つ自分に向けられる周囲の視線には、哀れみさえ感じた、という。実はこの男性、アエラの副編集長だ。

「画面を操作するだけで、お釣りも不要。同業界の人との飲み会はほとんどLINE Payなどのスマホ決済で支払います」

 そう話すのは、都内のIT企業に勤める徳原大さん(30)だ。徳原さんは「LINE Pay」「PayPay」「メルペイ」の三つのQRコード決済と「モバイルSuica」、そしてスマホ同士で簡単に送金できる「じぶん銀行」を使いこなす。コンビニや近所のスーパーでの買い物など、月7万~8万円をスマホ決済で支払う。理由は、手軽さとお得さだ。

「クレジットカードに比べて、還元率が高いんです。僕の使い方だと、2~3カ月で数千ポイントたまります。たとえばLINE Payなら1ポイント1円としてチャージされ、支払いに利用できるんです」

 日本でも急速に広がり始めたスマホ決済だが、お隣の中国ははるかに先を行く。

 北京市中心部を東西に走る長安街。天安門広場やビジネス街、様々な役所が面するこの目抜き通りで日々、行き交う人々にお金を無心する女性の手にはQRコードを印刷した紙があった。通行人が時折、その紙に自分のスマホをかざしていく。

 60歳の張さんは、小児マヒの12歳の孫娘のために医療費を稼いできた。以前はブリキの容器に5元や10元を投げ入れてもらっていた。だが、最近はキャッシュレス化の波で財布を持たない人が増え、お金を入れてくれる人が月に数十人程度にとどまり困り果てていた。

 今年の春、目の前に立ち止まった女性が張さんに尋ねた。

「私は現金を持ってないんですが、QRコードをお持ちではないですか?」

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福井しほ

福井しほ

大阪生まれ、大阪育ち。

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