作家・田辺聖子さん(c)朝日新聞社
作家・田辺聖子さん(c)朝日新聞社

 いつの時代も変わらず、「女の子の味方」だった。

『ジョゼと虎と魚たち』『感傷旅行(センチメンタル・ジャーニイ)』などの恋愛小説をはじめ、多彩な文学活動で知られる作家の田辺聖子(たなべ・せいこ)さんが、6日、総胆管結石による胆管炎のため亡くなった。享年91。

 田辺さんは1928年、大阪の写真館に生まれた。44年に樟蔭女子専門学校国文科に入学し、卒業後は大阪の金物問屋KK大同商店に入社。55年から大阪文学学校へ通い、60年に同人12人で「航路」を創刊。64年には、『感傷旅行』で芥川賞を受賞した。男女の恋愛や人間関係の機微を、大阪弁を駆使した独特の筆致とユーモアで綴る小説は多くの読者を魅了し、その後も女流文学賞(87年)、吉川英治文学賞(93年)、菊池寛賞(94年)、紫綬褒章(95年)などに選ばれた。2008年には、文化勲章も受章。06 ~07年に放送されたNHKの連続テレビ小説「芋たこなんきん」では、主人公のモデルにもなり、世代を超えて愛された。

 週刊誌「AERA」では、10年前の2009年1月12日号の特集「2009年100人の予言」で田辺さんを取材。世界同時不況の風が吹き荒れるなど混沌としていた時代に、強く生きるための“ヒント”を尋ねていた。やさしく投げかけてくれたのは、男女の哀歓を軽妙に描いた田辺さんならではの「甘い言葉」だった。ここでは、10年前に語っていた田辺さんの言葉を再掲する。

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 これからの世の中は、結婚しやすくなるでしょ。やっと男女共学が根付いたしね。男と女で同等に能力を認め合うっていうのは、すごいこと。昔は女の子は結婚のために働いたけれど、今は真面目な男性ほど、きちんと仕事を持っている女性のほうがいいと思うんじゃないの。

 でも、こんな自由な時代に、出会いのない人がいるの? 案外不自由なのね。出会いは神様の領域で、人と人はどこでつながるかわからない。若いうちは好奇心のおもむくままに、いろんなところに出かけていくといい。「婚活」だって昨日今日に始まったことじゃないしね。

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田辺流”男の人の最大の希望”は