新天皇は、難しいバトンを預かることになったと思います。天皇に求められるものは何か、先の天皇は新天皇に、高いハードルを課した。新天皇は民主主義社会における天皇制を、どういった戦略で自分のスタイルとして確立し、さらなる「進化」をさせていくのか。懸命に考えていらっしゃるのではないでしょうか。 

 受け継いだもののうち、特に何を選択して膨らませていくのか。たとえば沖縄への配慮は、続けなければならないはずです。沖縄の人の天皇への思い、わだかまりは、数十年間やそこらで簡単に解けるものではない。時間の積み重ねの中で誠意を見せることでしか乗り越えられないのだという覚悟を決めて、先の天皇は沖縄への訪問を重ね、お言葉にも盛り込んでこられたのでしょう。そこは新天皇もよくわかっていると思います。 

 それから、平成時代にはついに実現されなかった天皇訪韓という課題もあります。今は難しい状況ですが、もう少し落ち着いた雰囲気になれば、必ず取り沙汰されるでしょう。東アジア諸国民の相互理解と平和共存のために果たし得る役割に、注目と期待が集まるのではないでしょうか。 (構成/編集部・小長光哲郎)

※AERA増刊「ドキュメント新天皇誕生」掲載

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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