子どもには、暴力から守られて育つ権利がある。それなのに、親からなぐられるなどの「児童虐待」が増えている。何が起きているのか。毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』5月号に掲載された記事を紹介する。

児童相談所での虐待相談は10年間で3倍以上に
児童相談所での虐待相談は10年間で3倍以上に

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 食事を与えられず、十分に眠ることも許されない。真冬なのにシャワーで冷たい水を浴びせられる……。千葉県野田市の小学4年生、10歳の栗原心愛さんは、今年1月、親から虐待を受けた後に亡くなった。捜査機関は、特に父親の暴行が死につながったとみており、父親は傷害致死などの罪に問われている。

 児童虐待とは何か。

 児童虐待防止法という法律では、次の四つに分けられる。「死ね」と脅すなどの心理的虐待、「なぐる」「おぼれさせる」などの身体的虐待、「家に閉じ込める」「食事を与えない」などのネグレクト(育児放棄)、「性器をさわる」などの性的虐待だ。いずれも、法律で禁止されている。

 児童虐待は増えている。2017年度は13万3778件と、相談件数は10年前の3倍以上になった。特に増えているのは、全体の半数以上を占める心理的虐待だ。子どもの前で、親がその妻や夫に暴行したり暴言をあびせたりする「面前DV」も心理的虐待だという認識が広まったことも、増加の大きな要因となった。

 被害を受けた子どもの年齢を見ると、小学生にあたる「7~12歳」が最も多くて3割ほど。生まれて間もない「0~2歳」の約2割を上回っている。より抵抗できない小さな子だから被害を受ける、というわけではない。

 児童虐待の対応にあたるのは児童相談所と呼ばれる専門機関だ。強い権限を持っていて、子どもを守る「最後の砦」ともいわれている。

 どんな権限か。「泣き声がするけど、虐待かもしれない」。そんな通報を受けると児童相談所は調査を始める。ひどいケースとわかれば、親の同意がなくても、一時的に保護できる。状況がよくならなければ、親が反対しても、子どもを児童養護施設や、虐待を受けた子どもなどを預かる里親という一般家庭に託す。

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AERA編集部
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