60歳で定年して再雇用されたとしても役職はないし給与も下がる時代だ。白石さんは言う。

「社外活動で外にも居場所を作ることで、定年後、会社に固執する以外にも選択肢がたくさん広がります」

 白石さんに話を聞いた翌日に会った、Sansanの個人向け名刺アプリ「Eight」のコミュニティマネージャー、小父内信也さん(38)も「副業を始めるのは、遅いからこそいい」と強調した。

「若いうちに外の世界に飛び込むのもいいけど、40代、50代は自分の強みを生かすこともできるし、これまでの人脈の積み重ねが価値に変わるからです」  

 利用者が200万人を超えるEight。アカウント開設の際は、現職の名刺1枚を登録する仕組みだが、過去の名刺も登録できるので、そこで副業の名刺を公開する人もいる。これまで手掛けてきたことや強みなど、名刺の部署や肩書だけではわからないことも「キャリアサマリ」に自由に記述することができ、そこで副業を紹介している人もいる。アプリには名刺の保管だけでなくビジネスSNSの機能もあるので、「こんな仕事を始めました」と情報を発信することもできる。実際に会ったことがなくてもEight内で名刺交換も可能だ。ビジネスに特化したSNSのため、プライベートでの利用が多いツイッターやフェイスブックより、仕事に直結した交流がしやすいという。毎月のように全国各地でEight利用者の集まりがあり、そこでも新たなビジネスが生まれている。

「今は個人がどんどん発信できる時代で、ますますセルフブランディングが重要になります。副業をしている、いないにかかわらず、自分の価値を発信して、社外と新たなつながりをつくっていくことも重要だと思います」(小父内さん)

(編集部・深澤友紀)

※AERA 2019年5月20日号より抜粋