移植を受けるまで「平均13年3カ月」と言われる待機期間は、脳死・心停止した人からの提供を待つ「献腎移植」の場合のみ。健康な成人から二つある腎臓のうちの一つを提供される「生体腎移植」の場合は、2~3カ月の術前検査を経れば、希望の時期に手術を受けられる。

 この生体腎移植についても、

「血縁のない夫婦間や血液型の異なる親族同士でも可能なこと、また、60代以上の高齢者も問題なく受けられることはあまり知られておらず、説明を受けてから前向きに検討が始まることも多い」(同)

 腎臓が一つに減るドナー側の生命予後に悪影響がないことも、米国の追跡調査でわかっている。手術中の全身麻酔による一定のリスクや、術後は免疫抑制剤の服用を続ける必要はあり、それらを理解したうえで選択することが大事だ。

 近年、移植治療は増えてはいるものの、透析と比べると圧倒的に少ない。「日本の透析治療の技術水準が高い」「諸外国と比べ、脳死による提供が進んでいない」などの理由を述べたうえで、加来医師が指摘するのが、移植についての情報不足だ。

 実際に腎移植治療を受けた30代男性は証言する。

「たまたま移植の可能性について親族から聞き、自力でインターネットや公開講座で調べた。主治医に自ら紹介を願い出て、やっと移植にたどり着いた」

 透析はすでに患者数が多いため、情報に触れる機会もあるが、移植はその機会が極端に少ない。

「重要なのは、患者自身がすべての選択肢の中から選べること。特に腎不全の末期は判断する精神的、時間的余裕がなくなるので、症状が進む前の早い段階で検討できるようにすることが大事です」(加来医師)

(ライター・宮本恵理子)

AERA 2019年4月15日号