今年も2本のジョージア映画が公開される。「聖なる泉の少女」(8月24日から岩波ホールで公開)は太古からの暮らしを守る家族を描いた作品。「OUR BLOOD IS WINE(原題)」(公開日未定。配給・宣伝:アップリンク)はクヴェヴリ製法のワイン造りの復活を追ったドキュメンタリーだ。

 さらにいま脚光を浴びているのがジョージアの民族合唱であるポリフォニー(多声音楽)と踊りだ。昨年、来日したジョージア国立民族合唱舞踊団「ルスタビ」は、美しく重厚なポリフォニーと高度な技巧による舞踏で迫力のパフォーマンスを行い、大きな反響をもたらした。これらジョージア文化の根源にあるのが「ワイン」だと、はらださんは言う。

「ジョージア人にとって大切なものは、ジョージア正教(キリスト教)、言語、そしてワイン。ジョージア正教のシンボルの十字架はブドウの枝を聖女の髪で結わえて作られたものです」

 そんな“ワイン王国”の象徴がワインを囲んだ宴会(スプラ)。ピロスマニの絵画やジョージア映画にも多く登場する。

「ジョージアで人が集まればよく行われるもので、タマダと呼ばれる宴会の長が弁舌さわやかに音頭を取り、人々はそれに唱和し、ワインを飲み干します。そして宴もたけなわになると、ポリフォニーや踊りが始まるのです」(はらださん)

 会場近くの販売スペースにはジョージアワイン専門「H&Nワインジャパン」のワインが並ぶ。代表の本間真理子さん(62)は元・国際NGO職員。東日本大震災の復興支援をきっかけに辞職し、11年11月に知人とブドウ畑を共同購入して、ワイン造りを始めた。クヴェヴリ製法のワインも販売している。

「通常のワインは果汁を搾って醸造しますが、クヴェヴリは果皮や梗、種をすべて使い、一緒にクヴェヴリへ入れて醸造します。酸化防止剤もほとんど使用せずブドウの恵みそのものを味わうことができます」(本間さん)

 クヴェヴリの壺は大人が入れるほど大きく、中を洗浄し、蜜ろうを塗って殺菌効果を高める。その風味や香りがワインにも反映されるほか、渋みがしっかりとし“アーシー”(土っぽさ)も感じられるという。

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