「クヴェヴリは糖度が高く、自然の酵母などあるべきものがすべてそろっているブドウでなければ造れません。ジョージア国内でもクヴェヴリ製法で造られるワインは3パーセントほどだと聞きます」(同)

 クヴェヴリに限らず、ジョージアワインの魅力はなによりも「ブドウ」にあると本間さんは言う。

「世界に2千種類(3千種類ともいわれる)あるブドウ品種のうち、ジョージア原産の固有種は525種類です。遺伝子も一切組み換えしていない、人間の手を介さない品種が残っているのです。これらを次世代に継がなければ、と思ったのがワイン造りに関わったきっかけでもあります」

 ジョージアワインは究極にナチュラルで、ブドウそのものを楽しむもの。豊かな自然に育まれたジョージアの国の結晶なのだ。前出のはらださんは言う。

「ジョージア人はかつて敵国と戦うとき上衣のポケットにブドウの木を入れ、自分が倒れてもその場所にブドウが根付くようにしていたそうです。それほど彼らにとってブドウとはアイデンティティーそのものなのです」

(J.S.A.認定ワインエキスパート、ライター・中村千晶)

AERA 2019年4月1日号