島田高志郎(17)/2月にドイツであったババリアンオープンで優勝。今季の全日本選手権はショートで3位につけ、総合では5位だった (c)朝日新聞社
島田高志郎(17)/2月にドイツであったババリアンオープンで優勝。今季の全日本選手権はショートで3位につけ、総合では5位だった (c)朝日新聞社
佐藤駿(15)/今季のチャレンジカップ・ジュニア部門で優勝。羽生結弦や宇野昌磨より早い14歳で4回転ジャンプを成功させた (c)朝日新聞社
佐藤駿(15)/今季のチャレンジカップ・ジュニア部門で優勝。羽生結弦や宇野昌磨より早い14歳で4回転ジャンプを成功させた (c)朝日新聞社
鍵山優真(15)/今季チャレンジカップ2位。コーチを務める父は、フィギュアでアルベールビル、リレハンメル両五輪に2大会連続出場 (c)朝日新聞社
鍵山優真(15)/今季チャレンジカップ2位。コーチを務める父は、フィギュアでアルベールビル、リレハンメル両五輪に2大会連続出場 (c)朝日新聞社

 羽生結弦や宇野昌磨が牽引するフィギュア男子。そんななか、若手も着々と育ってきている。2022年の北京五輪で活躍する選手がいるかもしれない。

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 まず男子で最も注目したいのは、島田高志郎。愛媛県松山市出身の17歳だ。トップ選手のいない松山では、半回転ジャンプを跳ぶだけで目立つ存在。本格的にスケートをするため小学生で、高橋大輔を育てた岡山のリンクに移籍した。

「岡山で世界が変わりました。高橋選手の刺激もあって、目指すレベルは一気に上がりました」

 14歳で特別出場した全日本選手権で11位となり、新人賞。チャプリンに扮したコミカルで可愛らしいフリー演技は、観客のハートをわしづかみにした。

「昔はただスケートが好きで、その気持ちだけで演技していました。でも、一番になりたいという気持ちが強くなり、トリプルアクセルや4回転を跳びたいと考えるようになりました」

 大きな転機になったのは2017年春。ジュニアの有望選手合宿などで面識があったコーチのステファン・ランビエルから「面倒をみるよ」と声を掛けられた。ランビエルは06年トリノ五輪銀メダリストで、色気の溢れる演技で世界を魅了したスケーター。引退して間もないためコーチとしての手腕は未知数だったが、島田は一念発起してランビエルの拠点のスイスに渡って指導を受けることにした。

「ステファン先生のレッスンは細かく理論的です。身体のどの筋肉を使うか、どこに重心を置くか、一つ一つの動きが繊細に繋がっています。たくさん注意されるので覚えるのは大変ですが、すべてできたらすごい選手になれるというのがわかる。だから毎日が充実しています」

 今季は4回転トウループも習得し、ジュニアGPファイナルでは初成功。銅メダルを獲得し、ジュニアの世界トップグループ入りを果たした。全日本選手権は5位、世界ジュニア選手権は9位だった。

「ステファン先生は4回転を軽々跳んでお手本を見せてくれます。僕はまだ4回転は難しいと思いながら跳んでいますが、3回転のように当たり前の感覚で跳べるようにしたいです」

 島田以外にも、男子は金の卵が控えている。仙台市出身の佐藤駿(15)は、14歳で迎えた全日本ジュニアで4回転トウループを成功させ2位に。非凡なジャンプ能力を持ち、羽生結弦と同じアイスリンク仙台の出身でもあるため、羽生の再来と言われている。もう1人注目したいのは鍵山優真(15)。2度の五輪出場を果たした父・正和がコーチを務め、子どもの頃からスケーティングの基礎をしっかりと身につけてきた。ジャンプの着氷の流れがよく、成長しても崩れないタイプだ。全日本ジュニアを制した壷井達也(16)は、今季に初めてトリプルアクセルを成功したばかりだが、早くも成功率を高め武器にしている。

 ジュニア世代は、ほんの数カ月で新しい才能が芽を出してくる。層の厚さは、選手を刺激し、さらなる成長に繋がる。逸材の誕生が楽しみだ。(ライター・野口美恵)

AERA 2019年3月25日号