サンバイオの株価チャートには2018年11月1日から始まった急騰、今年1月29日以降の暴落が刻まれている(撮影/写真部・掛祥葉子)
サンバイオの株価チャートには2018年11月1日から始まった急騰、今年1月29日以降の暴落が刻まれている(撮影/写真部・掛祥葉子)

「サンバイオです。現在多数のお問い合わせをいただいており対応がしきれない状況でございます。お問い合わせについてはメールまたはウェブサイトをご確認いただければと思います」

 AERA編集部は取材を申し込むため電話をかけたが、無機質な応答メッセージに切り替わってしまう。電話の先は東証マザーズ市場に上場しているサンバイオ。2001年に創業、15年4月に東証マザーズ市場へ上場した創薬ベンチャー企業だ。

 1月29日、人の細胞を使った新薬の臨床試験が不調に終わったことを発表すると、失望からサンバイオ株に売りが殺到。発表直前の週に一時1万2730円だった株価は30日からストップ安が続き、2月5日に2401円の底値をつけた。5日間で5分の1に暴落。他の創薬ベンチャー株も総崩れとなり、株式市場は「サンバイオ・ショック」に見舞われた。サンバイオには投資家の電話が殺到していたのだろうか。

「暴落前のサンバイオの株価は過熱しすぎており、合理的な説明がしづらい水準でした」

 バイオ・創薬ベンチャー企業分析の第一人者とされる、いちよし経済研究所首席研究員の山崎清一さんは語る。

「サンバイオが注力していたのは『SB623』という脳疾患の薬で、効能によって2種類が臨床試験に回っている段階でした。昨年11月1日、一つ目の『外傷性脳損傷』に関して“運動機能の改善が認められ、国内で20年1月末までの承認申請を目指す”と発表。その後5営業日で株価は3685円から7550円になりました。年をまたいで上がり続けたのは、二つ目の『慢性期脳梗塞』の臨床試験もうまくいくという期待で買われていたからです」(山崎さん)

 周辺取材を進めているうちにサンバイオとつながった。森敬太社長(51)は2月下旬まで米カリフォルニア州のオフィスにいるが、サテライト中継なら取材に応じられるという。記者が東京都中央区(聖路加タワー)の本社を訪れたのは12日昼。現地時間は18時。ディスプレー越しに現れた森社長は背筋を伸ばして語り始めた。

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中島晶子

中島晶子

ニュース週刊誌「AERA」編集者。アエラ増刊「AERA Money」も担当。投資信託、株、外貨、住宅ローン、保険、税金などマネー関連記事を20年以上編集。NISA、iDeCoは制度開始当初から取材。月刊マネー誌編集部を経て現職

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