ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中
ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中
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(c)朝日新聞社
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 経済専門家のぐっちーさんが「AERA」で連載する「ここだけの話」をお届けします。モルガン・スタンレーなどを経て、現在は投資会社でM&Aなどを手がけるぐっちーさんが、日々の経済ニュースを鋭く分析します。

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 このまま本当に消費税を増税する気でしょうか?

 前にも書きましたが、現在の個人消費支出は、東日本大震災で買いたくても買うものがなかった2011年3月の約29万3千円をはるかに下回っています。この月を超えたことはその後幾度もなく、結局震災の真っただ中が消費のピークのようになってしまっている。非常にいびつなんですが、原因ははっきりしていて、その後8%に引き上げた消費税が諸悪の根源です。

 政府は軽減税率を導入しますが、食品の店頭購入と店内飲食に差をつけたところで逆進性がなくなるはずもありません。やるならぜいたく税で、1人あたり5万円を超える飲食には30%、それ以下は10%などとするしかないでしょう(5万円を超える飲食が普通になっている多くの国会議員はいやでしょうけどね……笑)。

 この話をすると必ず出てくるのが社会保障の「ただ乗り論」です。例えば年収400万円の給与所得者がいるとしましょう。この人が払う所得税はおよそ10万円、住民税が20万円、健康保険料が20万円、厚生年金保険料が36万円などとなる計算です。ざっくり言うと手取りが300万円くらい、まあ、貯金もすると仮定し、280万円が消費に回るとしましょう。

「ただ乗り論」は、所得税を10万円しか払っていないこの人が、まっとうな社会保障を受けるのは間違っているという考え方です。この人の場合、消費税の負担額は税率8%で22万4千円、10%で28万円ですから、それぐらい追加で負担してちょうどいい、というわけです。しかし本当にそうでしょうか。

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