全豪オープン決勝での試合運びで、GSを勝ち切る力を持った、ほんの一握りのトップ選手であることを証明した(写真:gettyimages)
全豪オープン決勝での試合運びで、GSを勝ち切る力を持った、ほんの一握りのトップ選手であることを証明した(写真:gettyimages)
松岡修造(まつおか・しゅうぞう)/1967年生まれ。プロテニスプレーヤー。スポーツキャスターとしても活躍(写真:IMG提供)
松岡修造(まつおか・しゅうぞう)/1967年生まれ。プロテニスプレーヤー。スポーツキャスターとしても活躍(写真:IMG提供)

 2大会連続のグランドスラム優勝を成し遂げ、世界ランキング1位に躍り出た大坂なおみ。どこまで進化を続けるのか。テニス解説者の松岡修造さんに聞いた。

【大坂なおみさんを称賛した松岡修造さん】

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 逃しかけた勝機を自力で取り戻し、完勝した。全米に続き全豪でグランドスラム(GS)優勝を果たし、世界ランキング1位となった大坂なおみ(21)。全米後に本誌で彼女の魅力を語ってくれたテニス解説者の松岡修造さん(51)に、成長ぶりを聞いた。

 4カ月前の全米制覇の頃と比べ、明らかになおみさんのテニス自体が進化している。その一つが肉体改造です。セレナ・ウィリアムズ(37)の指導経験もあるアブドゥル・シラー氏が昨年フィットネスコーチに就任してから、体幹の強化を徹底した。振り遅れてタイミングが狂ってもボールをコントロールできる力がつき、ベースラインより前で構えるスタイルで戦えた。

 サーブのリターンで、サービスラインとベースラインのど真ん中に立つ女子選手なんて見たことがありません。相手選手にとっては、とんでもない速さのリターンがくるのでプレッシャーがかかります。さらにストローク戦でもベースラインから下がらずに打ち続け、圧倒した。誰にもまねできない破壊力のあるプレースタイルです。

 メンタルの成長もめざましい。トリプルマッチポイントを握りながら2セット目を逆転された決勝は、さらに凄まじい「立て直し力」を発揮した。

 まず、このままの状況で勝つことは難しいと思ったし、そういう空気になりましたよね。経験値の高いセレナやナダル、ジョコヴィッチといった選手であれば、そうした逆境をはね返して勝ち切る「グランドスラム力」が身についている。しかしこれまでツアー2勝しかしたことのないなおみさんが、優勝同然の展開から逆転でセットを失った。相手も勢いを増しているなか、どうやっても精神的に立ち直りようがない状況で、トイレットブレークから戻ってきた彼女は、全くの無表情になっていました。

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松岡修造さんが初めて見たという…