ひとりの食事は気楽だが、何日も続くとわびしくなりそう……。単身赴任が決まったとき、円城寺征人(えんじょうじ・まさと)さん(47)にはそんな不安がよぎった。大手金融機関に勤務し、14年、東京から広島へ転勤に。

「周りを見ていても、単身赴任の場合、会社以外の人と交流することなく終わるケースが多いですよね」(円城寺さん)

 ところが「食べる」ことで、地元の人たちとつながり、円城寺さんの単身赴任生活は充実した。活用したのは飲食店のレビューを実名で投稿するグルメサイトRetty(レッティ)だ。

 円城寺さんがレッティを使い始めたのは11年。当初はフェイスブックを食事の備忘録に使っていたが、そうした投稿を好まない人もいたからだ。幸運なことにレッティの「食べ友」も同時期、広島に転勤に。当時、レッティには広島の飲食店の投稿が少なかったため「開拓しよう」と意気投合。地元のユーザーも巻き込み食べ歩くうち輪が広がった。オフ会なども通じて最終的に25人ほどの食べ仲間のコミュニティーが出来上がる。

 メンバー比率は、地元と地元外が半々。単身赴任者にとって、地元の情報を得られるのは貴重だ。一方、地元の人たちにとってもひとりでは入りづらかった店に仲間を得ることで行けたり、県外の情報に触れられたりするのが刺激となった。

 17年に帰任するまでの3年間で、円城寺さんのレッティへの投稿数は932にのぼった。

「自炊はあまりせず、1次会の前にはゼロ次会も。はしごをすることも多かったです」

 そう楽しげに振り返る。東京から再訪すると仲間が集まり、広島は円城寺さんにとって「第二の故郷」となった。「みんなで食べる『みん食』」をコンセプトに、食べて人がつながる場を提供する「KitchHike(キッチハイク)」共同代表の山本雅也さんは言う。

「匿名と実名の間のような、踏み込みすぎない、ゆるやかなつながりが『食べ友』は心地いいのです」

 誰かとご飯を食べたくなったとき、つながる方法はいろいろある。今日は誰と「同じ釜のメシ」を食べておいしい1日にしよう?(編集部・石田かおる)

AERA 2019年1月28日号より抜粋