好転の兆しが感じられたのは、13年4月末から5月にかけてのオランダ訪問だった。国王の即位式に臨むためで、雅子さまにとって11年ぶりの海外公務だった。

 出席はなかなか決まらず、宮内庁の風岡典之長官(当時)が会見で「オランダ側への回答期限も大幅に過ぎ、一刻も早くお決めいただく必要がある」と苦言を呈す事態になった。結局、即位式まで2週間弱となってようやく正式決定されたが、「当日、東宮御所を出発するまでどうなるかわからない」(宮内庁関係者)綱渡り状態だったことが最近の取材でわかった。

 雅子さまを後押ししたのが、オランダ王室だった。ベアトリックス前女王の夫だったクラウス殿下(故人)がうつ病を患った経験から、王室は雅子さまの置かれた境遇に理解を示し、06年にはご一家に静養先として離宮を提供した。オランダ国民からも温かく歓迎され、即位式に臨んだ雅子さまの表情はとても晴れやかだった。

●「雅子さま頑張って」とエールが送られる逆転現象

 もうひとつ、雅子さまの支えとなったのが、被災地の人たちだ。東日本大震災の発生後、ご夫妻は宮城、岩手、福島の被災地を繰り返し訪れ、一昨年までに3巡した。

 両陛下やほかの皇族方の被災地訪問と違うのは、雅子さまを待ち受けた被災者たちから「頑張ってください」「応援しています」という激励の声があがることだ。本来は皇室の方々が励ますはずが、逆に雅子さまにエールが送られる逆転現象が起きる。

 仙台市をご夫妻が見舞った際、涙ぐみながら「雅子さま、頑張って」と声を張り上げていた主婦がいた。宮城県は私の故郷。その主婦になぜ声を掛けたのか聞いてみた。主婦はこう答えた。

病気の身をおしてきてくださったわけでしょう。お互いにつらい思いをしたからこそ、私たちとより通じ合えている気がするんです」

 実際、雅子さまにとって、励ましの声が病気回復の糧になっているとも聞いた。ここ数年、雅子さまは公私ともに活動の幅を広げつつある。5月には皇太子さまの新天皇即位と同時に、新皇后となるが、雅子さまと親しい関係者は「妃殿下は多くの人たちに支えられて今があるとおっしゃっていた。これからは自分が恩返しする番だと思っていらっしゃるようです」と明かす。

 即位が近づき、皇太子ご夫妻は折々に新しい時代の活動を話し合っているという。そこでキーワードとなるのが冒頭に挙げた「国民の中に入っていく皇室」だ。

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